ダウン症弟のスマホ打ち込みがすごすぎる 岸田奈美さん

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聞き手・後藤一也
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 車いすの母、ダウン症の弟、急逝した父。作家の岸田奈美さん(29)は、そんな家族とのエピソードをネット上で発信している。弟の良太さん(25)は最近、スマホデビューしたが、不思議な現象が起きているという。3月21日の「世界ダウン症の日」に合わせ、ありのままの弟について語った。

初めての「朝帰り」

 3月11日の朝5時。家のピンポンが鳴ると、グループホームに行っていたはずの良太が荷物を全部持って家に帰ってきました。

 本当は、その日の作業を終えて夕方に帰ってくるはずでした。なぜ、朝に帰ってきたのでしょうか。

 それは、良太に持たせたスケジュール帳に、何時に帰るかを書かなかったからです。

 良太にとっては帰る日だから帰ってきて、またいつもの時間に家を出て、働こうとしていたようです。

 無断で逃げ出したことになるので、グループホームにとっては良くないことだったようです。でも私は責めるつもりはなく、むしろこれは良太にとって「良い失敗」でした。

 やっていいこととダメなことは、口で言うよりも、感覚で理解してもらったほうが早いことがあるからです。

 良太は一度失敗したから、その後は「朝帰り」はなくなりました。

 中学2年のときに父が亡くなりました。私は東京で暮らしているので、良太は、病気のため車いすが必要な母ひろ実(52)と、物忘れが多くなってきた祖母の3人で神戸で暮らしていました。

午前2時に起床

 物忘れが増えた祖母は、私や良太を今でも子ども扱いします。良太を夜7時に寝かせるため、良太は深夜2時ぐらいに起きて、冷凍のチャーハンを1人で食べます。そのため、夜食が原因で肥満が進んでしまいました。

 今年2月に母が入院したため、良太は3月からグループホームを利用することになりました。

 連絡がとりやすくなるかなと思って、母は「もったいない」と反対しましたが、私は良太にスマホを持たせることにしました。

 ふだんは文字を書くのも見本を写しながら書くのに、スマホを渡すと「ドラゴンボール」って打ち込んで動画を見たり、自分の思いをLINEで伝えたりしています。

 「ぬりえ 歳5 明かすママひろみ母さん仮面ライダードライブぬりえランチセット山本」

 仮面ライダーの塗り絵が欲し…

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