第3回育休を取らない夫、諦めた宇宙研究 安定を選んだけれど
無理だ。この状況で、「ライバル」たちに太刀打ちできるわけがない。
長男(2)の育休を半年で切り上げ、仕事に復帰した女性(33)は、子どもを産む前との違いにがくぜんとした。
構ってほしくて寄ってくる子どもの相手をしながら、食事をつくり、お風呂に入れ、寝かしつける。
1人でいられる時間は10分たりともない。ごはんをつくっているのに、だっこをせがむ長男に、ついイライラしてしまう自分に気づく。
絶対的に、時間が足りない。
ある程度の覚悟はしていたつもりだった。でも、天文物理学の研究をしていた女性にとって、それは、研究者としてのキャリアの終わりを意味した。
研究者として階段を登るには激しい競争があります。でも、家事や育児の負担は女性に偏る。ポッドキャストで科学医療部の杉浦奈実記者がリポートします。
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半年の育休で復帰
小さい頃から宇宙が好きだった。東京都内の私立中高一貫校から東大に進み、そのまま大学院で博士号を取った。
親からも、周囲からも「女の子が理系なんて」と言われることはなく、「やりたいことをやりなさい」と応援された。自分の人生を、自分が主役として歩むようにと言われて育ってきたのに。
同じ分野の研究をしている夫と結婚したのは28歳の時だった。夫は、東京の大学に正規の職を得て研究室を持っていたが、女性の研究拠点は東京から4時間ほどかかる地域にあった。
平日は研究拠点に単身で暮らす週末婚が数年続いた。「そろそろ子どもがいてもいいよね」と話し合った。
国立研究機関の5年任期プロジェクトの特任助教として採用され、2年目で出産。出産直前まで働き、半年の育休で復帰した。研究者として働き続けるには、任期が切れるまでに論文で業績を上げ、次の働き口を勝ち取らなければならない。
研究分野の特殊性を考えると、別居せずに研究を続けるには、女性自身が研究予算をとり、プロジェクトを差配する立場に就くしかなかった。
研究者同士の激しい競争の中での家事、育児。女性は次第に追い詰められていきます。
だがそれは、同じ東大大学院を出て研究者になった50人ほどの同期のうち、1、2人しか就いていない狭き門だ。
ポストを競うライバルの中に…
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