「業界の異端児」vs特捜部 1000日の全面対決、本人が証言台へ

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横山輝 藤牧幸一
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 「業界の異端児」は、いらだちを隠さなかった。

 出版大手「KADOKAWA」の会長(当時)の角川歴彦(つぐひこ)氏(81)は、東京五輪パラリンピックをめぐる汚職事件の捜査の手が迫る2022年9月、質問を繰り返す記者に「アリ地獄みたいだな。何回も、何回も……」と気色ばんだ。その後、角川氏は贈賄容疑で逮捕、起訴された。

 あれから1千日が経とうとする25年5月20日。角川氏は、東京地裁の法廷で午後1時半から、初めての被告人質問に臨む。

 問われているのは、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之・元理事=収賄罪で公判中=側に、6900万円(時効の関係から元理事の起訴内容は7600万円)の賄賂を支払ったとする贈賄罪だ。

 検察は、賄賂の趣旨について①KADOKAWAを大会のスポンサーに選定してほしい②協賛金を安く抑えて迅速に手続きをしてほしい――といった依頼への見返りだったと主張する。

 角川氏は、逮捕時から一貫して無罪を訴えている。「部下から報告を受けていない」などという主張だ。

サブカルチャーを牽引した「出版業界の異端児」

 角川氏は1943年、角川書店を創業した源義氏の次男として生まれた。後に社長となる春樹氏を兄に持つ。

 66年に角川書店に入社すると、情報誌やライトノベルなど新規事業を次々と立ち上げた。

 経営トップを長く務め、2014年に動画投稿サイト「ニコニコ動画」のドワンゴとの統合を主導し、メディアミックスと呼ばれる手法で日本のサブカルチャーを牽引(けんいん)した。

 商号変更したKADOKAWAを、講談社集英社小学館の3大出版社と比肩する会社へと成長させ、「出版業界の異端児」とも呼ばれた。

 そんな角川氏に疑惑の目が向けられた。22年9月3日、東京五輪をめぐりKADOKAWAが不正な資金を渡した疑いがあると報道された。

異例の代表取材

 角川氏は「代表取材なら受ける」として、東京都千代田区の本社で取材の場を同月5日に設定。事件の渦中にいる当事者が、表だって取材に応じるケースは珍しいことだった。

 記者「賄賂を渡したという認識は?」

 角川氏「全くありません。自分たちの精神を汚してまで仕事をしろなんてことは(部下に)言わない」

特捜検事「まずいまずいまずい」

 代表取材の翌日、角川氏は東…

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