(社説)鹿児島県警 疑惑の解明と説明を
鹿児島県警の前生活安全部長が、警察官の犯罪を隠蔽(いんぺい)しようとしたとして県警本部長を告発した。前部長は、捜査で得た情報を漏らした疑いで逮捕されており、その裁判手続きの中で訴えた。
生安部長といえば県警トップクラスの要職だ。それが本部長を名指しして非難する、極めて異例の事態である。警察という組織全体への信頼を揺るがしかねない。県警自身が公正に捜査を尽くすのはもちろん、起訴不起訴を判断する検察庁、警察庁、警察を管理する県や国の公安委員会などは、全容解明と説明責任の徹底に向け、それぞれの職責を果たさねばならない。
前生安部長の本田尚志容疑者は、退職直後の3月末、あるライターに封書を郵送。県警霧島署員の関与が疑われたストーカー規制法違反容疑事件などについて書かれており、被害女性の実名や、問い合わせ先として退職した前刑事部長の氏名と住所、連絡先が記されていた、とされる。
本田容疑者は先週の勾留理由開示手続きで事実を認め、自らの行為をわびた上で、野川明輝県警本部長を名指しして「本部長が隠蔽しようとしたことがあり、どうしても許せなかった」と語った。
枕崎署員による盗撮容疑事件に関し、本部長が「最後のチャンスをやろう」「泳がせよう」と言ったとし、「不祥事が相次いでいた時期だったため、新たな不祥事を恐れたのだと思う」と述べた。
野川本部長は、報道陣に対し、各事件では容疑者の逮捕など必要な対応がとられていたと反論。隠蔽の意図を否定し、「捜査が終結した際には説明したい」と語った。捜査中とはいえ、発言は短時間かつ一方的で、およそ説明したとは言えないものだった。
警察庁は県警への監察を実施する方針を示した。組織運営の根幹にかかわる問題との危機感を持つべきであろう。
県警の情報漏洩(ろうえい)をめぐる不祥事は、昨年にさかのぼる。
県医師会元職員を巡る強制性交容疑事件に関し、あるウェブメディアが、県警の内部資料「告訴・告発事件処理簿一覧表」とともに捜査に疑問を呈する記事を掲載。県警は今年3月に内部書類の流出を認め、4月に曽於署員を情報漏洩の疑いで逮捕した。前生安部長が情報提供したライターは、このウェブメディアに記事を投稿していたという。
情報漏洩の捜査は、報道の自由や公益通報制度との関係など重大な問題をはらみ、慎重さが求められる。捜査は適切だったか。県議会の質疑などあらゆる機会に、説明を尽くす必要がある。
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