(社説)機能性表示食品 予断排し議論を幅広に

社説

 小林製薬のサプリメントを摂取した人たちに健康被害が広がった問題で、消費者庁の有識者検討会が、「機能性表示食品」の制度見直しに向けた議論を始めた。応急の手当てだけでなく、消費者の疑問、不安に応える幅広い議論が必要だ。

 これまでの調査で、サプリの原料に使われた紅麹(べにこうじ)から、製造過程で想定されていない物質が複数見つかった。一つは青カビ由来とされるが、他の物質は特定に至っていない。それらが健康被害の原因なのかも、まだ不明だ。

 原料の製造過程、品質管理に問題があったのは明らかだろう。だが、それが原因だとするのは早計だ。今回の製品には、医師の処方が必要な医薬品の成分にあたるものが含まれ、その影響の可能性を指摘する専門家もいる。

 機能性表示食品は、国が安全性や機能性を審査する特定保健用食品(トクホ)と違い、事業者が一定の情報を届ければ、「コレステロールを下げる」といった表示での販売が認められる。安全性が担保されるのかとの懸念は制度の創設以来根強くあった。

 検討会は、5月末にも見直し案をまとめる予定だが、原因特定にはさらに時間がかかる可能性もある。健康にかかわる問題なので迅速な対応も大事だが、現段階で予断をもって議論の幅を狭めては、制度への信頼は戻らない。

 まずは当面の措置の議論を急ぐとしても、制度のあり方を含む中長期の課題についても関係省庁で十分に洗い出し、政府全体で腰を据えて取り組むことが求められる。

 今回、小林製薬が健康被害の疑い事例の報告を受けてから消費者庁に届け出るまで約2カ月かかったことも、被害拡大の一因と指摘されている。消費者庁が約6800ある機能性表示食品の総点検をしたところ、今回のもの以外に34製品で142件の被害情報が判明したが、いずれも国に届け出ていなかった。

 国の指針は速やかな届け出を求めていたが、具体的基準があいまいだった。「お手本」にした米国の制度でも、有害事象の報告は事業者の義務だ。法律への位置づけも含めて、検討が必要だ。

 現在の制度は、事業者が公表した機能性や安全性についての情報をもとに「消費者が商品を選択する」のが基本にされている。だが、公表情報がどこまで判断に資するものになっているのか、そもそもトクホと機能性表示食品との違いが消費者に正しく伝わっているのか、疑問がぬぐえない。消費者目線での議論を深めなければならない…

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