(社説)飢餓迫るガザ 惨事防ぐ停戦を急げ

社説

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 人道上の大惨事を防ぐには即時停戦しかない。それが国際社会の意思だ。イスラエルパレスチナ自治区ガザでの軍事作戦を中止しなければならない。ハマスは約130人とされる人質全員を直ちに解放すべきだ。

 国連安保理は25日、4月上旬まで続くイスラム教の断食月ラマダン期間中の停戦と人質の無条件解放を求める決議を採択した。永続的な停戦につなげることやガザへの人道支援物資の拡充も求めた。

 15の理事国のうち日本を含む14カ国が賛成し、米国は棄権した。昨年10月に戦闘が始まって以来、安保理が停戦決議を可決したのは初めてだ。

 イスラエルの後ろ盾として過去4度にわたって決議案に拒否権を行使してきた米国の変化が大きい。ネタニヤフ首相は反発し、今後の戦闘の進め方を協議するため予定していた米国への高官派遣を取りやめると発表した。理解しがたい対応だ。

 米国では最近、民主党重鎮が、「和平の障害」だとしてイスラエルの政権交代を求める発言をした。国際人道法を無視する振る舞いに、特別な同盟国である米国内でも批判が高まる状況を読み誤ったのはイスラエルの方だ。

 国際司法裁判所は1月下旬、イスラエルに対し、ガザでのジェノサイド(集団殺害)行為を防ぐ「あらゆる手段」や、人道支援の提供などを行うよう命じた。だが、その後も病院や難民キャンプを攻撃するなど、軍の行動に変化は見られない。

 ガザの死者は3万2千人を超えた。戦闘に巻き込まれるほかに、大勢の民間人の命を奪う差し迫った危機と懸念されているのが、食料と水の極度の不足だ。

 国連によると、ガザの人口の3割にあたる68万人が深刻な飢餓状況という。避難民100万人以上が集中する南部ラファで地上戦が展開されれば、7月には111万人が飢餓に直面すると予測する。

 今月初めには北部の病院で少なくとも10人の子どもが数日間で脱水症と栄養不良のために死亡したという。看過できない事態だ。

 支援が滞っているのは、イスラエルがエジプトとの境界検問所を極めて限定的にしか開かないためだ。欧州連合は首脳会議で「前例のない民間人の犠牲と危機的な人道状況にがくぜんとしている」と批判し、カナダはイスラエルへの武器輸出を停止した。

 世界の声に背を向けても強硬路線を歩むのか。その先には人道悲劇を許した重い責任が待ち受けていることを、イスラエルは自覚すべきだ。

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