(社説)オスプレイ再開 説明尽くさぬ強行だ

 米軍がきのう、輸送機オスプレイの日本国内での飛行を再開した。

 鹿児島県沖で墜落し8人が死亡した事故を受け、全世界で飛行を約3カ月停止していた。その措置から、よほどの重大事故だったとわかる。幅広い地域の住民の安全にかかわる。再開には十分な理解が求められていた。

 だが、措置の解除が表明されて1週間足らず。詳しい原因を伏せたまま早くも現実に飛び始めるのでは、飛行再開の強行と言わざるをえない。

 防衛省は再開にあたり、在日米軍や陸上自衛隊の基地がある11都県と関連の28自治体に説明を終えたという。しかし「特定の部品の不具合」とした事故原因について、政府は「米側から極めて詳細な情報提供を受けている」としながらも、事故調査が続いていることなどを理由に詳しい内容は明らかにしないままだ。

 その姿勢に疑問の声が相次ぐ。米軍普天間飛行場がある沖縄県宜野湾市の松川正則市長は「事故原因の特定の部分がしっかり説明されていない。納得できない」と不満を表明した。沖縄県の玉城デニー知事も、原因や対策の具体的な説明がなく、「強い憤りを禁じ得ない」と語った。当然の反応だ。

 木原稔防衛相は飛行停止解除にあたって、関係自治体に「丁寧に説明する」と述べていた。それを欠いただけでなく、陸自のオスプレイの飛行再開も同時に決めた。

 政府は本来、住民の不安を代弁し、米側に厳しく安全確認を求めるべき立場だ。それが一体になって再開を急いだ。国民の安全を軽視したと言われても仕方ない。

 防衛省によると、在日米軍はオスプレイ32機を普天間や横田基地(東京都)などに駐機させている。陸自は14機を木更津駐屯地(千葉県)に暫定配備し、佐賀県内に移駐する計画だ。全国を飛び、訓練などを通じて幅広い地域に影響が及ぶが、とりわけ駐機数の多い沖縄が深刻だ。

 政府は最近、中国をにらんだ「南西シフト」を急ぐあまり、沖縄とあつれきを生む場面が目立つ。普天間の移設では、代執行を経て辺野古での工事再開に踏み切った。陸自が沖縄県うるま市に計画した訓練場には地元が強く反発し、見直しに追い込まれた。防衛省が今月、同市に地対艦ミサイル連隊を配置するため関連装備の搬入を始めた際、住民らが抗議活動を行った。

 地元の理解を得ないまま装備や人員を増強しても防衛力強化にはならない。対話を軽視する過ちを真摯(しんし)に省みることが、政府には求められる…

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