(社説)盛山氏と教団 文科相の任に堪えない

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 宗教法人を所管する政府の責任者として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求した大臣だ。その権限と職責において、教団との関係は一点の曇りも許されない。公正な審理を進めるうえでも、もはや任に堪えないと判断せざるをえない。

 盛山正仁文部科学相が21年の前回衆院選で、教団系団体の世界平和連合から「推薦状」を受け取り、選挙支援を受けていたことがわかった。さらに、事実上の政策協定にあたる「推薦確認書」を交わしていた疑いも浮かんだ。

 盛山氏は選挙公示2日前、この団体主催の国政報告会に出席して推薦状を受領したという。選挙戦では、教団信者らが有権者に電話で投票を呼びかけ、支援の状況は随時、同氏の事務所にも報告していた、とされる。

 だが盛山氏は22年、自民党の点検に対し、当選5カ月後に関連団体の会合であいさつをしたことだけ申告し、選挙の経緯は伝えていなかった。昨秋の文科相就任時にも明らかにしなかった。きのうの国会質疑では「確認できない」「はっきりした記憶はない」と釈明したが、過去にふたをする姿勢では、行政への信頼が失われるばかりである。

 安倍元首相の銃撃事件後、自民党の国会議員らと教団側が選挙支援にあたり推薦確認書を取り交わしていたことが問題になった。改憲を進める一方、同性婚の合法化は慎重に扱うなどと誓約する内容で、政策への影響の有無はなお検証できていない。

 確認書には、教団側が推進する家庭教育支援法や青少年健全育成基本法の制定に取り組むとの約束があったことも深刻に受け止めるべきだ。とりわけ教育行政と密接にかかわる点であり、文科相であればこそ認識と姿勢が厳しく問われるのは当然だ。

 解散請求をめぐっては、折しも今月22日、国と教団双方から意見を聞く審問が東京地裁で始まる。盛山氏が教団への負い目を抱えたままで適切な立証を進められるのか、疑念を抱かざるをえない。

 岸田首相の任命責任は極めて重い。しかし首相は国会で「未来に向けて関係を断つ」と繰り返し、辞任を否定する盛山氏をかばった。任命時に明らかでなかった深刻な事実が判明した以上、不問に付すことはありえない。

 自民党の「点検」が、いかにおざなりだったかも明白になった。教団側が推薦確認書に署名を求めたのは、数十人規模とされる。この際、徹底調査に踏み切らなければ、自民党は教団問題を引きずり続けることになるだろう。

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