(「政治とカネ」を問う)政治資金、穴・穴・穴…塞ぐには パーティー、「実態は寄付」指摘も=訂正・おわびあり

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 自民党派閥の政治資金規正法違反事件は、政治資金をめぐるルールの甘さを露呈させた。政治資金パーティーに関する規定、罰則や収支報告書公開のあり方……。「ザル法」と呼ばれる制度の穴はどこにあり、どう塞げばいいのか。(東郷隆、編集委員・伊藤嘉孝)▼1面参照

 政治資金規正法の目的は、議員らの活動が「国民の不断の監視と批判の下」に行われるようにすることだ。外部のチェックが働くように政治資金収支報告書が公開されている。

 しかし事件では、この収支報告書に、派閥のパーティーで集めた金の一部が記載されず、キックバック(還流)や各議員の「中抜き」によって裏金化されていた。

 派閥に限らず、政治家個人や政党の地方組織などの集金手段でもあるパーティーをめぐっては、ルールの甘さが長らく指摘されてきた。

 1枚2万円が相場のパーティー券は、1回あたりの購入が20万円以下なら購入者の名前や金額を報告書に記載しなくていい。「年間5万円超」が記載対象の献金(寄付)よりも透明性が低い。例えば券を5枚(10万円分)売ったとしても記載義務はなく、売り上げを「なかったこと」にして裏金化することが容易だ。買った側が政治資金規正法の対象でない個人や企業の場合は、購入側が公開することはほとんどなく、売った側の記載する額が正確かどうかの検証は難しい。

 現金払いで領収書が交わされないこともあり、記録が残るように振り込みや電子決済にすべきだという声も出ている。

 議員個人側への企業・団体からの献金は、癒着を防ぐために禁止されているが、パーティー券は企業・団体も購入できる。パーティーによっては、会場代や飲食費を抑えることで「利益率」が9割に上ることもある。出席しない前提で券だけを買う購入者もいる。「実態は寄付」との指摘も根強く、パーティー自体の禁止論も出ている。

 ■人件費は総額のみ「壮大な作文」

 パーティー以外でも「穴」は多い。

 政党が「政策活動費」などとして議員個人に渡す金は、議員が何に使ったのか使途を報告する必要がない。「政治資金規正法の最後のブラックボックス」とも言われる。

 2022年までの20年で、主要政党側から議員個人に支払われた額は計約426億円。8割が自民(約347億円)で、22年に最も多く受け取っていたのは自民の茂木敏充幹事長の9億7150万円だった。今回の事件で、一部の議員側が捜査に「政策活動費だから収支の報告は不要と考えていた」と釈明したこともあり、ルールの厳格化や廃止を求める声が相次いでいる。

 また議員個人側への企業・団体からの献金は禁じられているが、議員が代表を務める政党支部には認められている。政党支部で企業・団体献金を受けて議員側に迂回(うかい)することもできる。

 報告書に記載されるが、使途の内訳が不透明な支出もある。私設秘書らに支払われる「人件費」だ。明細を記す他の支出とは違い、総額を記せばよく、何人がいくら受け取ったか、わからない。「表に出せない使途を人件費に入れた」「壮大な作文だ」と取材に証言する元議員やベテラン秘書もいる。

 監査制度も「ザルだ」と言われる。議員の関係政治団体は、政治資金について研修を受けた税理士や公認会計士、弁護士によるチェックを受ける義務があるが、対象は支出だけ。作業は領収書と収支報告書の照合などに限られ、使途が政治活動として妥当かどうかは調べられない。監査人が自ら寄付をした政治団体の監査を担うケースもあり、公正さに疑問を持たれることもある。派閥は議員の関係政治団体ではないため、監査の対象ですらない。

 今回の事件で、罰則にも目が向けられている。収支報告の虚偽記載などの規正法違反は、報告書の作成義務が一義的に会計責任者にあるため、議員本人の責任は問いにくいとされる。議員にも責任が及ぶ「連座制」の導入論も出始めた。

 (2面に続く)

 <訂正して、おわびします>

 ▼21日付総合3面の政治資金問題の記事につく図表で、政治資金規正法「達反」とあるのは「違反」の誤りでした。

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