(社説)万博混乱の責任 維新も政権も免れぬ
大阪・関西万博の経費が再び膨らむ見込みが正式に表明された。開催を提唱した維新・大阪府市側と、それを受け誘致に動いた政権は、両者とも責任を免れない。国民の負担増への反発は強く、開催の是非を問う声も出ている状況に真摯(しんし)に向き合うべきだ。
会場建設費の増額は20年に続き2回目。総額は当初の1・9倍、最大2350億円になる。資材や人件費の上昇が理由だが、見通しの甘さは否めない。国と府市、経済界が3分の1ずつ負担するため、税金の投入額も増える。
政府は臨時国会に増額分を盛り込んだ補正予算案を提出する方針で、国会で正当性が問われるのは必至だ。
800億円余とする運営費も膨らみそうだ。全額を入場券収入で賄う計画だったが警備費を切り離し、約200億円を国が負担する方向だ。
建設費増について、朝日新聞の世論調査では「納得できない」が7割強で「納得できる」の約3倍に達した。批判が高まるなか、維新からは責任や負担を国に押しつけるかのような言動が相次ぐ。
日本維新の会の馬場伸幸代表は8月、海外パビリオンの建設遅れに関して「万博は国の行事。大阪の責任とかそういうことではなしに、国を挙げてやっている」と語った。
国際博覧会条約上、国による開催が前提なのは確かだ。だが万博は大阪維新の会を創設した橋下徹・大阪市長(当時)が提唱したのが発端で、大阪府市も当事者だ。準備・運営を担う日本国際博覧会協会(万博協会)も国と府市、経済界の三者が支える。
維新大阪府議団は、建設費の増額分を国が負担するよう求めた。大阪維新代表でもある吉村洋文知事は負担割合を守るとしたが、府は国の交付金による支援を求める構えで、「デジタル田園都市国家構想」関連の交付金などが候補になっているようだ。
万博は半年間限りのイベントで、閉幕後にパビリオンなどは撤去される。それに適する交付金があるのか。無理な拡大解釈で認めるなら、大阪から国へのつけ回しというほかない。国民の不満はさらに高まるだろう。
開発に失敗し「負の遺産」とされてきた人工島「夢洲(ゆめしま)」の起死回生策として、維新が統合型リゾート(IR)とともに打ち出したのが万博で、安倍政権が東京五輪後の景気対策や維新との関係強化への思惑から応じた経緯がある。
万博をめぐる混乱は、動機の不純さやあいまいさと無縁ではなかろう。維新と政権は過去も振り返りつつ、開催の是非を省みる責任がある。
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