(社説)年内入試増加 試される大学の教育力
大学入試は、12月にかけて、受験生の個性を重視する「総合型選抜」や高校の校長が推薦する「学校推薦型選抜」が本格化していく。こうした学力以外の要素を重視する方式で進学する学生は、21年春の入学者で半数を超えている。大学入学後の教育の充実や学生への支援の重要性が増している。
二つの選抜は本来、筆記試験に強い学生とは別に、多様な学生を集めて学内を活性化させるために行われる。だが、少子化にもかかわらず大学が増えているため、人気が低迷する私立大を中心に学生の早期確保を狙って導入しているケースも多い。
文部科学省は20年度、AO入試を総合型選抜へ、推薦入試を学校推薦型選抜へと名称を変更。大学には、小論文や面接などで学力を測るよう求めた。しかし、実質的に学力不問の入試を続ける大学は多いという。
そんななか、今夏に朝日新聞と河合塾が実施した共同調査では、3割以上の大学が今後10年の間に二つの選抜の募集人員を「増やす」考えを示した。
入試への高校生や保護者の不安が、こうした動きを後押しする。大規模私大を中心に入学定員の管理が厳格化され、数年前、人気大学の一般選抜の難易度が上昇するなどしたからだ。
合格しやすさを重視して進学した学生には、学力や学習意欲に問題があるケースも目立つ。ただ、筆記試験が苦手な入学者に対しても、適切な教育や支援を提供し成長させて社会に送り出す大学は各地にある。高卒者の半数以上が大学に進む現在、こうした大学こそ文科省は補助金などで支えるべきだ。「定員割れ」かどうかだけでなく、教育に意欲的か、生き残りしか考えていないのか、しっかり見分けて対応してほしい。
入試が複雑化するなか、高校の教員には、生徒に合う大学を見きわめる眼力が求められる。だが実態は、忙しすぎて入試や大学の最新情報を把握できていない人も多い。二つの選抜で提出する書類は千差万別のうえ手書きのものも多く、教員が膨大な作業量に悲鳴を上げている。働き方改革の一環として、文科省は可能な部分だけでも書式の統一を検討してみてはどうか。
両選抜が浸透し、対策を指南する塾や予備校も増えてきた。海外留学や有料の体験活動への参加も含め、家庭の経済力が合格率を左右するのではないか、という懸念も出ている。家計による入試での格差は極力なくす必要がある。各大学は学生の多様化という両選抜本来の目的をふまえ、一定の学力を確認したうえで、華々しい体験よりも、授業や部活動などの経験や成果を重んじてほしい。
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