(社説)「国葬」・教団 信頼回復 言葉だけでは

社説

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 極めて異例となる安倍元首相の「国葬」は、決めた本人が国会できちんと説明する。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係は、所属議員それぞれに対応をゆだねるのではなく、党が責任を持ってチェックし、関係を断たせる。

 こんな当たり前の判断に1カ月半もかかるとは、岸田首相は世論を甘く見ていたというほかない。この間に失われた信頼は大きく、納得のいく説明と確実な実行を伴わなければ、回復は容易ではないと知るべきだ。

 首相が新型コロナ感染の療養期間が明けたきのうの記者会見で、国葬や教団との関係について新たな方針を表明した。

 国葬をめぐっては、これまで応じてこなかった国会の閉会中審査への出席を認め、テレビ入りの質疑を行う考えを示した。国葬に否定的な意見が増し、説明責任を果たさぬ首相への風当たりが強まるなか、追い込まれての転換に違いない。

 問われるのは、説明の中身である。首相はきのうも、国葬にした理由として、憲政史上最長の在任期間など4点を繰り返した。特に諸外国から多くの王族や首脳級の参列が見込まれ、国として礼節をもって迎えるには国葬がふさわしいと述べた。

 しかし、小渕元首相の内閣・自民党合同葬に、当時の各国首脳が参列したように、国葬でなければ礼を欠くわけではあるまい。安倍氏への政治的評価が分かれる国内の状況に目をつぶって、外交儀礼も含む海外からの評価ばかりに依拠するわけにはいかない。

 税金から支出される経費の全容も明らかでない。政府は先週、予備費から2億5千万円の支出を決めたが、警備費や接遇費は含まれていない。首相は来日する要人の全体像が確定しないと数字は示せないと述べたが、規模感もわからないのでは議論の前提を欠く。閉会中審査では、現時点での概算なり見通しなりを提示すべきだ。

 教団に対しては、「党の方針として関係を断つよう、所属国会議員に徹底する」と述べ、遅ればせながら、党が前面に出る考えを示した。ただ、これまでの長く深いつながりを考えれば、号令ひとつで片がつくとは思えない。何より、過去の徹底した検証と、真摯(しんし)な反省が前提になければならない。

 その点、不可欠なのが、国政選挙時を含めた、安倍氏と教団のかかわりの解明だ。首相は「ご本人が亡くなられた今、十分な把握には限界がある」と述べたが、端(はな)から逃げ腰では、首相の言う「政治への信頼回復」などおぼつかない。安倍政権下での教団の名称変更の経緯もつまびらかにされねばならない。

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