(社説)日米経済2+2 自由貿易の形骸化防げ

社説

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 日米両国が、経済と安全保障の関係をテーマにした協議を始めた。国際秩序が揺らぐなか、両国がこの分野で協調する必要性は理解できる。だが、安保の論理を優先するあまり自由貿易の原則をないがしろにすれば、日米を含めた世界経済の土台を掘り崩す。「例外」は最小限にとどめるべきだ。

 両国は先週、外務・経済閣僚による「日米経済政策協議委員会」(経済版2プラス2)の初会合を開いた。「外交・安全保障政策と経済政策はもはや一体不可分」(萩生田経産相)という観点で設けたという。

 共同声明では、中国を念頭に「経済的な影響力の有害な使用について、深刻な懸念と反対を表明した」と明記した。米国主導の「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を推進し、半導体などの供給網での協力を強めるといった点でも合意した。

 米中対立の先鋭化に加え、足元ではロシアのウクライナ侵略も起きた。軍事上の重要技術の流出防止や、エネルギーの安定確保のために、国際的な経済取引に一定の制約が加わることは、やむをえないだろう。

 だが、こうした措置は自由貿易の原則をゆがめ、国際経済に悪影響をもたらすリスクをはらむことを、忘れてはならない。

 日米は半導体や蓄電池の生産や開発に巨額の税金を投じる方針だが、世界貿易機関(WTO)のルールは貿易を阻害する補助金を禁じる。日米も、中国の国有企業などへの不透明な補助金を批判してきた。今回の方針は従来の主張と整合性があるのか。十分に説明できているとは言いがたい。

 両国は、「ルールに基づく経済秩序の実現」を目指すともいう。だが、米国は、トランプ政権による鉄鋼・アルミ製品への不合理な追加関税をいまだに撤廃していない。日米貿易協定も、WTOルールが求める関税撤廃率を実現できていない。自らがルールを軽視しながら、国際社会に順守を唱えても、説得力は乏しい。

 一方で政治的な目的で貿易をゆがめる中国の姿勢も相変わらずだ。最近では、政府やインフラ企業による事務機器の調達で、外資企業を排除する新規制の導入も検討されている。

 確かにWTOには、安全保障をルールの例外にできる規定もある。だがこれを乱発すれば、自由貿易は形骸化する。乱用を相互に激化させるような愚を犯してはならない。

 そのためには、例外措置の妥当性を第三者が判断する仕組みが不可欠だ。WTOの紛争処理機能を一刻も早く回復させることこそ、日米が取り組むべき第一の課題である。

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