(社説)河井夫妻事件 受領者も責任を免れぬ

社説

[PR]

 3年前の参院選広島選挙区での大規模買収事件で、現金を渡した側は有罪となったのに、もらった側は一切刑事責任を問われないまま、多くがいまだに政治的・道義的責任も果たしていない。これでは到底納得は得られず、政治への信頼回復にもつながらない。

 公職選挙法違反で有罪が確定した河井克行元法相や妻の案里氏から現金を受領した地方議員ら100人全員を、東京地検不起訴としたことに対し、検察審査会が35人を「起訴相当」、46人を「不起訴不当」として再捜査を求める議決をした。

 くじ引きで選ばれた市民の代表が示した判断は、検察に対する異議申し立てであり、首長や議員など公職にある者が政治的・道義的責任にほおかむりをしていることへの厳しい批判と言える。うやむやに終わらせては、民主主義の土台である選挙の公正が揺らぐとの危機感を、しっかりと受け止めたい。

 議決は、事件を主導した河井夫妻と受け取った側では、責任の重さが異なるのは当然としつつ、「受領者らを全く処罰しないという結論は、金員の受領が重大な違法行為であることを見失わせるおそれがある」とした。特に公職者の責任を重く見て、事件後に辞職したかどうかに加え、受け取った金額や返還・寄付の有無などを考慮した。

 審査会の指摘に多くの人がうなずくだろう。東京地検が改めて捜査を尽くし、判断すべきことは言うまでもない。その上で、審査会が公職者について「責任がとりわけ厳しく追及されるべきだ」と指摘したことに注目したい。

 現金を受け取った地元政治家は40人に及ぶが、疑惑発覚後に任期満了を待たず辞職したのは首長と議員合わせて10人に満たない。多くは「夫妻から無理やり渡された」などと語り、むしろ被害者だと言わんばかりだ。

 議会も自浄能力を発揮できないどころか、受領を擁護するような姿勢が際立つ。

 13人が受け取っていた広島県議会は昨年、各会派の代表者からなる政治倫理審査会を開いたが、簡単な釈明を聞いただけで一律の文書警告にとどめた。広島市議会も13人に説明を求めたのみで、一部議員への辞職勧告決議案は否決した。検察の不起訴を身内への甘い対応の口実にしてきたが、市民の代表が今回示した根本的な疑義に正面から向き合わねばならない。

 事件を招いた自民党の対応も厳しく問われる。党本部が案里氏側に渡した1億5千万円の使途の詳細を、裏付けとなる領収書などを示して説明するとともに、受領した所属議員らの政治責任もはっきりさせるべきだ。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら