(社説)オミクロン株 国内での拡大に備えよ

社説

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 新型コロナオミクロン株への感染が、国内でも相次いで報告されている。入国時の検査では陰性だったのに、後に感染が確認される例も出ている。一つひとつ教訓をくみながら、拡大の防止に努める必要がある。

 先週末、入国後に岐阜県の自宅で待機していた男性の感染が判明した。株の判定に時間がかかることもあって、厚生労働省から県に濃厚接触者との連絡が届いたのは入国4日後で、男性を空港から車で送った知人も、追加で濃厚接触者とされた。

 政府はオミクロン株の感染者がいた場合、同じ飛行機に乗っていた全員を濃厚接触者として扱うなど、厳しい水際対策をとる。それでも限界があることをこのケースは示している。

 株の早期見極めに向けた技術の確立を急ぐとともに、濃厚接触者の情報を地元自治体に速やかに伝えるようにして、確実なフォロー体制を築いてほしい。

 年末に向けて入国者はさらに増える見込みだ。政府は入国後の待機施設を7千室から約1万3千室にまで増やした。それでも不足する恐れがあるとして、滞在した国や地域に応じて一部を自宅待機に切り替えた。

 施設・人員の確保や検査態勢の拡充は、コロナ禍が始まって以来の課題だ。とりわけ空港周辺で入国者や濃厚接触者を一時的に待機させる施設が足りないことは、東京五輪のころから明らかになっていた。だが問題は先送りされ、今日に至った。

 当面、宿泊療養用に部屋を押さえている都道府県に協力を求めて急場をしのぐ構えだが、遺漏のないよう引き続き対策を講じるのが政府の務めだ。

 一方で入国制限や施設待機によって大勢の人が不便を強いられ、不安も広がる。現在の措置はいつまで続き、どんな状況になれば緩和できるのか。情報や見通しを適切に発信していくことも行政に求められる。

 厚労省は先週、「第6波」を想定した保健・医療提供体制の計画を発表した。受け入れ可能な入院患者はこの夏のピーク時よりも3割増となり、病院ごとの病床確保状況が初めて公表された。保健所の人員も、感染拡大期には通常の3倍まで増やせるようにしたという。

 いざという時、この計画通りに病床やスタッフの配置を機動的に転換できるよう、意識と体制を整えておくことが肝要だ。

 緊急事態宣言発出などの目安となる感染状況の評価にあたっては、第5波までよりも都道府県の判断が重視される。感染力や病原性、ワクチンや薬の効果など、オミクロン株に関する最新の知見をもとに、国と自治体が認識を共有して対処していくことが欠かせない。

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