(社説)原油価格高騰 当面の安定と長い目と

社説

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 原油価格の高止まりが続いている。石油輸出国機構OPEC)と、ロシアなど非加盟産油国が先週オンラインで開いた閣僚級の会議でも、来月からの追加増産は見送られ、原油高解消の手がかりは得られなかった。

 人口の多い北半球で暖房需要が高まる冬を迎え、高値は来春まで続くとの見方もある。コロナ禍から回復の兆しが見える世界経済に水を差しかねない。

 国内では円安も相まってガソリンが値上がりしている。先月には3年ぶりに1リットル=160円台にのせた。幅広い業種で物流費や生産コストが上がり、需要の拡大や賃上げを伴わない「悪い物価上昇」が起きるおそれもある。政府と日本銀行は物価の動きを注視する必要がある。

 最近の原油市況は、世界的な新型コロナウイルスの感染状況に翻弄(ほんろう)されてきた。昨春には、感染拡大による消費低迷で先物価格が1バレル=20ドルを切り、OPEC側は世界供給量の1割に当たる日量970万バレルの大幅な協調減産に踏み切った。

 今年に入って感染状況が落ち着き始めたこともあり、春ごろには60ドル前後で推移。OPEC側は減産幅の縮小にかじを切り、8月からは毎月、日量40万バレルずつ増産することにした。

 しかし、このペースでは需要の回復に追いつかず、先月には先物価格が約7年ぶりに80ドルを超えた。日米を始め消費国が増産を要請したものの、OPEC側は来月も減産縮小幅を据え置いた。コロナ感染が再拡大する可能性もあり、クウェートやイラクなどがさらなる減産縮小に難色を示したという。

 コロナ禍がいつ、どう拡大するか予想するのは確かに難しいが、価格が急騰すれば石油離れを加速させる。当面の価格と需給の安定は、産油国にとっても望ましいはずだ。

 英国で開催中の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、いかに脱炭素を進めるかが最大のテーマだ。化石燃料から脱却しようとの流れは強まる一方で、産油国が不安にかられるのも無理はない。

 原油価格の乱高下を避けつつ、化石燃料に頼らない社会へとスムーズに移行するには、産油国と消費国の協力が不可欠だ。例えば、新たな収益源として水素などの新エネルギー産業に期待する産油国に対し、日本などが技術面で支援することが考えられる。

 国内でも、長い目で脱炭素に向かうきっかけにしたい。ガソリン価格の高止まりで相対的にコストが下がる電気自動車燃料電池車などは、普及を急ぐべきだ。太陽光や風力といった再生可能エネルギーも、拡大へのさらなる努力が求められる。

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