(社説)通学路事故 子どもの命、守る責任

社説

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 千葉県八街(やちまた)市で下校中の小学生の列にトラックが突っ込み、5人が死傷した事故で、千葉地検は運転手の男を危険運転致死傷の罪で起訴した。

 男は事故の30分ほど前に酒を飲み、その影響で居眠り運転をしたとされる。地検は「正常な運転に支障が生じるおそれ」を認識して飲酒し、居眠りをして「正常な運転が困難な状態」に陥ったと判断したという。

 近年、飲酒運転厳罰化が進み、一定の効果をあげてきた。それでも昨年も166人が犠牲になっている。根絶に向けた一層の取り組みが必要だ。

 運転手を雇用する運送事業者にも、飲酒運転をなくすための仕組みが整えられてきた。料金を受け取って荷物を運ぶ「緑ナンバー」の事業者には、11年に運行前後に検知器を使った飲酒検査が義務づけられた。

 起訴された男が運転していたトラックは自分たちの荷を載せる「白ナンバー」で、勤務先はこの義務の対象外だ。だが、点呼の際に運転手の飲酒や疲労の様子を確認したり、運行計画を作成して事故の防止を図ったりする「安全運転管理者」を置いていなかった。国や自治体、警察は改めて道路交通法のこの規定の周知を図り、チェックの目を厳しくするべきだ。

 一方で、本人の意識や周囲の監視に期待するだけでは限界がある。呼気からアルコールを検出するとエンジンがかからなくなる装置が開発されているが、普及が進まず1台約15万円かかる。エアバッグのように、全ての車の標準装備とすることを検討できないだろうか。

 今回の事故では、通学路の安全をどう確保するかという、以前からの課題も浮上した。

 現場の道路は幅7メートルと狭く、中央線も歩道もないのに、自動車の抜け道に使われていた。小学校のPTAは10年ほど前に、ガードレールの設置を市に繰り返し求めた。ところが市は、道路の構造上不可能と説明。拡幅も用地買収などが必要になるため難しいとして、有効な対策はとられなかった。

 登下校中の事故が相次いだ12年には、国が各自治体に通学路の安全点検と対策の徹底を要請した。この時も近くにある交差点の改修が優先され、結果として今回の事故に至った。

 自動車優先でつくられてきた街をいっぺんに変えるのは難しい。しかし特殊な路面塗装やポールの設置といった簡易な対策で、車の通行量を減らしたりスピードを抑える効果を上げたりした例はある。スクールバスの活用も検討に値する。

 子どもを危険から守るのは大人の責務だ。知恵を絞り、できる限りの工夫を凝らしたい。

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