(社説)同姓は「合憲」 国会が背負う重い責任

社説

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 司法による救済を一日千秋の思いで待つ人たちにとって、承服できない決定だ。

 夫婦は同じ姓を名乗ると定めている民法や戸籍法の規定が、結婚の自由などを保障した憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、最高裁大法廷は合憲とする判断を示した。

 訴えていたのは、18年2~3月に別姓での婚姻届を役所に提出し、不受理の処分を受けた3組のカップルだ。

 大法廷は15年12月に同姓の強制を合憲とする判決を言い渡している。きのうの決定は、この間の社会や国民意識の変化などを踏まえても判断を変更すべきだとは認められないとし、「処分の時点において規定は違憲とはいえない」と結論づけた。

 疑問は尽きない。

 審理した15裁判官のうち4人は、逆に違憲とする見解を明らかにした。働く女性が一層増えていること、旧姓使用が拡大しているのは現行法が抱える不合理さの表れであることなどを挙げ、別姓を認めないのは「不当な国家介入」「個人の尊厳をないがしろにしている」などと批判している。現実を的確にとらえ、はるかに説得力がある。

 合憲とした11人も手放しで容認しているわけではない。

 夫婦の姓についてどんな制度を採るのがふさわしいかという問題と、憲法に適合するか司法が判断することとは「次元を異にする」と指摘し、制度のあり方は「国会で論じ、判断すべき事柄」とした。うち3人は補足意見で、状況によっては「規定が違憲と評価されることもあり得る」と述べ、国会に対し、社会や意識の変化に不断に目を配り、対応するよう求めた。

 ボールは唯一の立法機関である国会にあることを、改めて宣言した決定といえよう。

 結婚によって、夫婦の一方、多くの場合女性が改姓を余儀なくされてきた。社会生活を送るうえで多くの不便・不利益を被り、アイデンティティーの喪失という問題も生まれて久しい。やむなく事実婚の形をとると、配偶者控除をはじめ税制上の優遇を受けられないなど、いまや世界で類を見ない同姓を強制する法律は、随所に深刻な矛盾をもたらしている。

 法制審議会が選択的夫婦別姓を導入する民法改正要綱案を答申して25年が過ぎた。議論が盛り上がった時期もあったが、自民党の抵抗は根強く、昨年末の政府の男女共同参画基本計画の記述も後退させられた。

 最高裁の再びの合憲判断でお墨付きを得たと安堵(あんど)するのが誤りなのは、決定を丹念に読めばわかる。この問題に臨む姿勢が厳しく問われていることを、国会は自覚しなければならない。

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