(社説)北朝鮮の挑発 同じ愚を繰り返すのか

社説

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 危うい恫喝(どうかつ)による瀬戸際外交に回帰しようというのか。足元の苦境を直視し、不毛なパターン思考を改めるべきだ。

 北朝鮮がきのう、日本海側に弾道ミサイル2発を発射した。国連安保理決議に反する発射は昨年3月以来で、バイデン米政権発足後では初めてだ。

 金正恩(キムジョンウン)氏との「蜜月」を演出したトランプ氏は、政権を去った。米政権はいま、新たな北朝鮮政策づくりを進めている。

 その作業は途上だが、前政権とは違い、実務協議を積み上げる伝統的な手法をとるだろう。指導者に権力が集中する北朝鮮は、苦手とするやり方だ。

 それを見越して挑発に出たのかもしれない。だが、こうした揺さぶりで有利な駆け引きを狙う浅薄な戦術は、もう見え透いている。米政権との対話を一時的に拒んでも、北朝鮮の閉塞(へいそく)状況は何ら改善されない。

 国連制裁や自然災害で苦しむ北朝鮮の経済は、コロナ対策の徹底でさらに落ち込んでいる。食糧不足が伝えられ、北朝鮮当局は自給自足を国民に呼びかけている。

 今回の発射に先立ち、21日には巡航ミサイルも発射した。米国の反応をみながら段階を上げる行動には、米国との対立は望まない思いもうかがえる。

 北朝鮮が孤立を脱して経済を立て直したいのなら、まず挑発を重ねる愚行をやめるのが最低限の条件だろう。

 トランプ政権下で朝鮮半島政策は揺れ動き、米国、韓国、日本の枠組みの連携も緩んだ。北朝鮮に共に向きあうべき3国の政策調整も急ぐ必要がある。

 バイデン政権は、これまでの米朝関係を総括し、有効な政策を練り上げるべきだ。朝鮮半島の非核化と恒久平和の体制づくりを、着実に、段階的に築く道筋を描かねばならない。

 そのために基盤となるのが、日米韓の協力である。近年、周到な調整を欠いたまま試みられた圧力一辺倒や無視、対話姿勢への急転換などの場当たり的な対応では、成果は望めない。

 南北融和を最優先に掲げる韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は、残り任期が約1年となった。独自に制裁の緩和や支援を模索しているようだが、日米とのすり合わせを経ない単独行動は慎むべきだ。

 慰安婦徴用工などの問題で対立を続ける日韓関係も、大きな支障となっている。北朝鮮の短・中距離弾道ミサイルは、日韓を脅かす共通の懸念であることを忘れてなるまい。

 米韓日の安全保障を担当する高官は来週、ワシントンで約1年ぶりに会合を開く。自由と民主主義を守る主要国として、アジア太平洋地域の安定を見据えた論議を深めてもらいたい。

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