(社説)時短協力金 不合理な支給を改めよ

社説

 首都圏を中心に飲食店を展開する「グローバルダイニング」が東京都を相手に提訴した。新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に基づく、都の時短命令は違憲だとの主張である。

 緊急事態宣言は、営業の自由など国民の権利を制限する力を政府と自治体に与える。都は時短を守らない129店に特措法45条に基づく要請を出し、それでも応じなかった店のうち32店に命令を出した。

 時短営業の要請を守った事業者と、守らない事業者の間での公平性には配慮する必要があろう。気になるのは、都が命令を出した32店のうち26店がグローバルダイニングの店舗であることだ。時短反対を公言する同社を狙い撃ちしたように見える。権利を制限する措置を、恣意(しい)的に運用することがあってはならない。

 対立が生じた要因の一つは、規模にかかわらず一律で1店舗あたり1日6万円を支給してきた宣言下での時短協力金のあり方である。1都3県は宣言解除後も一律4万円の支給を続けている。零細な店では十分すぎる場合もあるが、大規模店では家賃や人件費をまかなえない。

 中小規模店より経営体力がある大規模店も、コロナ禍の長期化で余力は乏しくなっている。今後も感染再拡大の恐れがあり、首都圏や関西圏などでは時短要請の延長が相次いでいる。

 緊急事態宣言の期間でなければ命令はできず、時短の徹底は、飲食店が自発的に要請に従うかどうかにかかっている。大規模店に負担を強いるような仕組みの限界を、政府や自治体は直視する必要がある。

 一律支給の欠陥は、かねて指摘されてきた。命令を拒んだ店への過料を盛り込んだ改正特措法が2月初旬に成立した際の付帯決議にも、「経営への影響の度合いを勘案し、必要な支援となるよう努める」と明記されている。本来なら法改正に合わせて改めるべき問題を、これ以上放置することは許されない。

 政府は3月から一律で渡した財源の範囲内なら、自治体の判断で規模に応じた支給を可能にした。しかし、財源内で大規模店への支給を増やすには、小規模店への支給を減らすしかない。このため政府と自治体で責任の押し付け合いのようになり、見直しは進んでいない。

 従業員数、家賃、売上高など規模の物さしは様々である。国会の付帯決議を踏まえれば、まず政府が新たな仕組みの基本ルールを整理するのが筋だ。そのうえで地域の実情に応じ、自治体が細部を詰めるべきだろう。

 時間を浪費して対策を徹底できず、感染拡大を招くような事態だけは、避けねばならない…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません