(社説)世論調査不正 説明責任果たさぬまま

社説

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 FNN(フジテレビ系ニュースネットワーク)と産経新聞が合同世論調査(電話)を再開して2カ月になる。

 データの不正入力が明らかになったのが昨年6月。再発防止策を講じたというが、問題発覚前はもちろん、事後の対応もおよそ適切とは言いがたい。このままでは信頼の回復はおぼつかないと知るべきだ。

 両社によると、昨年5月までの1年間に実施した計14回の世論調査すべてに不正があった。全体の12・9%にあたる1886件の回答が架空のものだった。業務を委託された調査会社が、無断で別会社に再委託し、その現場担当者がうそのデータを入力していたという。

 信じられないことに、フジ・産経いずれの社員も調査に一度も立ち会っておらず、再委託されていたことにも気づかなかった。あまりに無責任・お粗末な話で、世論調査とその報道に誠実に向きあっていたとは到底思えない。

 加えて納得できないのは、両社が社会に対して当然行うべき説明をしていないことだ。

 放送倫理・番組向上機構BPO)は先月、フジから提出された報告書や関係者へのヒアリング結果などを踏まえ、「重大な放送倫理違反があった」とする意見を公表した。

 その中で初めて、▽不正が起きる以前も、現場を見た回数は数えるほどしかない▽担当者は1人だけで、その当人も調査について深く理解していなかった▽局内で調査はルーチン作業と受け取られ、強い関心は寄せられていなかった――などの事実が明らかになった。フジは弁護士2人を含む調査チームで検証したというが、メンバーも報告書も公表していない。

 しかもBPOの所管は放送分野だけのため、産経側の態勢や認識はなお不明のままだ。朝日新聞の取材に、産経は「原則として編集に関することは答えていない」としている。

 疑問は尽きない。

 不正入力によって内閣支持率などにどんな影響が出たのか。両社は調査結果を報じたニュースを取り消したが、調査を引用して放送・掲載したコメントや記事、コラムについての説明はない。フジは社内処分をしたというだけで内容を公表せず、産経に至っては処分の有無すら明らかにしない。なぜなのか。

 メディアが実施するものに限らず、世論調査は調査する側と調査対象となる市民との間に信頼関係があって成り立つ。両社の対応はそれを傷つけ、調査全般に対する疑念や不信を引き起こしかねない。態度を改め、遅まきながら報道機関として説明責任を果たすべきだ。

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