馬毛島、アセス手続き開始 防衛省、米軍訓練移転・自衛隊基地設置 首相肝いりで計画推進=訂正・おわびあり

[PR]

 防衛省は18日、馬毛(まげ)島鹿児島県西之表市)への米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地設置の計画をめぐり、訓練の騒音や工事に関する環境影響評価(アセスメント)の手続きを始めた。先月の市長選で計画反対を訴えた現職が勝利したが、菅政権は計画を進める意向だ。

 アセスは環境影響評価法に基づくもので、同省が環境への影響や保全策を検討する。同省による地元説明では、期間は「2年程度」。アセス終了後に早期着工を目指しており、工期は約4年としているが、着工や訓練開始の時期は示していない。

 計画は菅義偉首相官房長官時代に「肝いり案件」として進められてきた。

 もともと民主党政権時の2011年に日米合意で訓練の恒久的施設として無人島の馬毛島が候補地となった。現在FCLPが実施されている硫黄島東京都)は、艦載機の拠点の岩国基地山口県)から遠く、米国から安定的な訓練場所の確保を強く求められてきた事情がある。

 だが、その後の島の買収交渉は難航。FCLPを「最重要訓練」と位置づける米側から、菅氏ら安倍政権幹部は幾度も移転推進を求められ、19年に160億円で買収にこぎつけた。

 防衛省は昨年8月、島全域を自衛隊基地とする施設配置案を公表。馬毛島を南西諸島防衛を支える新たな訓練拠点にする狙いがある。FCLPは年に1、2回、それぞれ10日間ほど実施される見通しで、自衛隊機による離着陸訓練も年間約130日が想定される。

 菅氏は今月15日の国会で市長選の結果を問われ、「地元の皆さんのご理解とご協力をいただくように努力をする」と述べ、計画を進める姿勢を示した。防衛省関係者は「計画は日米関係に大きく影響する。総理肝いりでもあり、選挙結果は関係ない」と語る。(寺本大蔵)

 ■市長選接戦、割れる地元

 地元・西之表市では先月末、米軍訓練移転と自衛隊基地整備を主な争点とする市長選で「失うものの方が大きい」と計画に反対した八板俊輔市長が、容認派の新顔を破った。結果を受け、八板氏は「民意は得られていない」としてアセスを実施しないよう防衛省に要請書を送ったばかり。アセスの手続きが始まった18日、「要請が顧みられず、誠に遺憾だ」と反発した。

 アセスについて「地元へ詳細な説明をするために必要な調査」とする防衛省に対し、計画に反対する市民団体の三宅公人会長は、昨年12月以降の馬毛島沖での海上ボーリング調査開始の動きも含め、「国は強引に計画を進めようとしている。アセスも工事に向けた第一歩で許容できない」と憤る。

 ただ、市長選はわずか144票差での現職勝利だっただけに、賛成派は一定の手応えを感じている。

 計画に賛成する市民団体は要請書を出した八板氏に「拮抗(きっこう)した民意を顧みていない」と抗議文を提出。自民党森山裕国会対策委員長は14日、会長を務める鹿児島県連の会合後、記者団に「市長が反対だから計画が頓挫することはあってはならない」と述べ、基地建設への強い意思を示した。(奥村智司、小瀬康太郎)

 <訂正して、おわびします>

 ▼19日付総合4面「馬毛島 アセス手続き開始」の記事で、馬毛島での環境影響評価(アセスメント)について「県条例に基づくもの」とあるのは、「環境影響評価法に基づくもの」の誤りでした。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら