(社説)日米首脳協議 国際協調 共に立て直せ

社説

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 米国の政権交代を機に、一国主義や権威主義の世界的な蔓延(まんえん)に歯止めをかけねばならない。日本も国際協調の立て直しに、共に力を尽くすべきだ。

 バイデン氏の大統領就任後、初めてとなる菅首相との電話協議が行われた。日米同盟の一層の強化や、中国への牽制(けんせい)を念頭においた「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携で一致した。

 トランプ前大統領との間で、安倍前首相は「蜜月」とも言われる個人的な関係を築いたが、米国製兵器を大量購入し、日本の防衛予算に大きなゆがみを残した。トランプ氏が多国間の枠組みに背を向け、国際秩序をかき乱すのを翻意させることもできなかった。

 首相には、トランプ氏に振り回された前政権の轍(てつ)を踏むことなく、地域と世界の安定に貢献する日米関係の構築に努めてもらいたい。

 バイデン政権は温暖化対策の国際ルール・パリ協定への復帰を表明し、世界保健機関(WHO)からの離脱を撤回するなど矢継ぎ早にトランプ路線を転換しつつある。電話協議では、気候変動新型コロナ対策での協力を確認した。国際社会が直面する共通課題の克服に向け、着実に成果をあげてほしい。

 難しい対応を迫られるのは、中国への向き合い方だろう。

 米中の覇権争いは構造的なもので、バイデン政権になっても厳しさは変わるまい。ただ、分野によって対峙(たいじ)と協力を使い分ける手法が想定される。

 日本からすると、中国の軍事力拡大や強引な海洋進出に対応するため、米国の後ろ盾は不可欠だが、地域の不安定化につながるような対立の先鋭化は望むところではない。

 電話協議でバイデン氏が、米国の日本防衛義務を定めた日米安保条約5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認したことを日本政府は歓迎している。抑止力の維持・強化とともに、地域の緊張を緩和し、関係国間の信頼を醸成する取り組みも進めなければならない。

 中国と隣国であり、歴史的な関係も深い日本としては、米中の健全な関係づくりに寄与する複眼的なアプローチで、外交を展開する必要がある。

 米国のアジアへの関与を確かなものにするのも、日本外交の役割だ。トランプ氏が4年連続で欠席した東アジアサミットへの参加を求めたり、トランプ氏が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰を粘り強く働きかけたり、前政権の傷痕の修復を図りたい。

 秩序の再構築をめざし、多国間の協調を進めることこそ、日米の首脳が背負う責任である。

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