(社説)「阪神」26年 被災地の力生かす支援

社説

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 阪神・淡路大震災の発生からきょうで26年になる。

 「ボランティア元年」と呼ばれ、がれきの片づけや炊き出しなど現場での直接の手伝いはもちろん、NPOが避難所の運営をサポートしたり、駆けつけたボランティアを把握し、人手を探している被災者につないだりする仕組みが、整備・定着していく契機となった。

 だがいま、コロナ禍で人の移動は制限され、支援のあり方の見直しが迫られる。南海トラフ地震などの広域災害が起きればどこもが被災地になり、外からの応援は直ちには見込めない。時代に応じて、地元の力を引き出し、生かす工夫を重ねたい。

 ピースボート災害支援センター(PBV、東京)は、従来型の現地へのスタッフ派遣とあわせ、「地域の担い手を増やし、復旧・復興への力を高める」ことに力を入れ始めた。

 おととしの台風19号で被災した福島県いわき市の現場では、社会福祉協議会、市、NPO、寺院など官民の組織が集う「情報共有会議」の設置と運営をサポート。昨春にスタッフが引きあげた後も、会議の中心メンバーが準備中の災害支援ネットワーク組織との連携を続ける。

 同じく19年に立て続けに台風に襲われた千葉県では、いまも被災家屋にブルーシートを張る作業が続く。館山市に住むPBVのスタッフは、県内の消防に働きかけて作業を体験してもらうなどして、現地での担い手の確保に取り組んでいる。

 被災地の住民が被災地の住民を支える。そのやり方は一様ではない。

 昨夏豪雨に見舞われた熊本県では、コロナ禍でボランティアの募集を県内に限ったため、人手不足が課題となった。そこで泥のかき出しなどの要員を有償で集めることにした。複数のNPOが協力する「副業でみんながつながる熊本・球磨復興プロジェクト」と、建築士ら有志の「熊本支援チーム」の事業だ。

 「副業~」は休業者や失業者を念頭に1日5千円を支給。「支援チーム」は、特に人手が欲しい平日に動ける学生に、5千円と地元で使える千円の飲食券を渡した。豪雨の被災者と、コロナ禍で困窮する人や飲食店の双方を助けようという知恵を、全国から集まった計2500万円余の寄付が支え、延べ1400人が汗を流した。

 ボランティアすなわち手弁当という価値観にとらわれる必要はないし、実際に活動している人々の間ではそうした考えが広がる。公費で後押しすることも検討されてしかるべきだ。

 被災の状況も、取り巻く社会の姿も変わる。新たな発想と実践が常に問われている。

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