(社説)国際学力調査 生活とつながる学びを

社説

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 のべ64の国・地域の小学4年と中学2年を対象に、昨年行われた国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果が公表された。4年に1度、主に基礎的な学力を測る調査だ。教科・学年別で日本は95年以来ほぼ維持してきた3~5位を保ったが、懸念や問題ものぞいた。

 3年ごとに読解力や思考力を中心に問う国際学習到達度調査PISA)同様、成績に一喜一憂する必要はない。だが、子どもの学力を国際的な視野で把握できる貴重なデータだ。文部科学省は結果を詳細に分析し、専門家や現場の教員の意見も聞きながら、今後の教育政策の充実に活用してほしい。

 この調査で順位や得点以上に課題になってきたのが、日本の子の勉学への意欲の低さだ。

 「勉強が楽しい」と答えた子の割合は、今回も「小4理科」を除いて国際平均を下回った。「中2数学」と「中2理科」でも、「勉強すると日常生活に役立つ」と答えた割合は依然として低かった。心強いのは、それでも前向きな回答が増える傾向にあり、国際平均との差も縮まっていることだ。

 文科省は、08年改訂の学習指導要領が「思考力、判断力、表現力」の重視を打ち出したことを受けて、現場の教員が実験や観察を増やした効果が出たと受け止めている。一方で取り組んでいる先生や研究者の間には、まだ不十分との声もある。学びと生活のつながりを意識させることで、理解度を向上させる授業が引き続き求められる。

 そのかぎを握る教員に関して気になる調査結果もあった。過去2年間に指導方法や評価などの研修を受けた教員に教えられている子の割合が、国際平均よりも低かったことだ。かねて指摘されている教員の多忙さが、こんなところにも影を落としているのではないか。

 工夫を凝らした授業を準備し実践するには、事務作業をはじめとして過重になっている業務を整理し、教員自身の学ぶ機会を増やすことが欠かせない。働き方改革の必要性を社会全体で認識する機会としたい。

 今回の調査もふまえ、文科省は5、6年生の算数や理科などを専門教員が教える「教科担任制」を、22年度から導入する方向で検討を進めている。全教科を担当してきた小学校教員の負担軽減が期待される一方で、授業が専門的になりすぎないかという不安も耳にする。

 ようやく算数や理科の「勉強が楽しい」と答える子が増えてきたところだ。難しいことをわかりやすく教えてこその専門教員だとの自覚をもち、他の教員と連携して、学ぶ意欲を引き出す指導に力を尽くしてほしい。

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