(社説)コロナと経済 「第2波」から学ぶこと

社説

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 菅政権は、新型コロナウイルス対策と社会経済活動の両立を掲げる。実際にどう臨むのか。これまでの経験から教訓を引き出しつつ、課題を社会全体で共有すべきだ。

 新型コロナは6月後半から陽性判明者が再び増え始め、「第2波」の様相を示した。7月末ごろに山を越えて下降に転じ、現時点までは3~5月の波に比べて重症者や死者の数はやや少なめだ。だが、最近は新たな陽性判明者の減少が鈍り、油断できない状況が続く。

 「第2波」では、緊急事態宣言は出さず、都道府県や地域単位での部分的な休業や移動自粛の要請で対応した。より早く手を打って感染を抑え込めなかったか、といった反省点がある一方、結果的には拡大に歯止めをかけつつ、4~5月ほどには社会経済活動を制約せずにすんだ。医療・防疫関係者や様々な業界の努力や工夫の成果であり、経験の蓄積が生かされてきたといえるだろう。

 とはいえ、経済への負の影響は依然、深刻だ。6月は前年並み近くに戻った家計消費が、7月は再び落ち込んだ。鉱工業生産は回復基調だが、水準はかなり低い。雇用の減少幅も非正規を中心に高止まりしている。

 4~6月のGDPは前期比7・9%のマイナスだった。7~9月は上向くものの、低下幅の約半分を回復する程度にとどまる、との見方が多い。感染の波が繰り返される限り、経済も一進一退を強いられそうだ。

 「第2波」の経験を踏まえて再確認すべきは、医療・防疫の強化と経済活動の回復は車の両輪であることだ。感染が広がれば経済にもブレーキがかかる。両者のバランスをとりながら、水準を高めていくしかない。均衡を失した場合には、柔軟に軌道修正することも必要だ。

 経済政策でも、この間の対応の成否を点検しつつ、戦略を整理し、目指す方向を早期に示さねばならない。基本は、マクロ経済の復調を保ちつつ、打撃が集中している部門への手当てに注力することだ。

 金融・財政政策の大枠は維持すべきだろう。そのうえで、事態が長引き、回復度合いにもバラツキが見えるなかで、よりメリハリの利いた対応を工夫する必要がある。特に、経済縮小のしわ寄せを受けた働き手の生活への目配りは欠かせない。

 さらに、将来の不透明感を減らし、前向きの経済活動を促すためにも、「平時」に復していく条件や道筋についての検討も進めたい。日本経済は、コロナ禍以前から景気後退局面が続き、課題が山積していた。目前の問題に取り組むためにも、中長期の視野が求められる。

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