(社説)総裁選告示 政権総括 議論を深めよ

社説

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 「安倍1強」とまでいわれた長期政権の功罪を総括し、その先の展望を描く。わずか1週間という短期間に、この議論をどれだけ深めることができるか。国会議員票ですでに圧倒的優位にたつ菅義偉官房長官の責任はとりわけ重い。

 安倍首相の後継を決める自民党総裁選がきのう告示された。石破茂元幹事長、菅氏、岸田文雄政調会長の3氏が立候補し、立会演説会や共同記者会見で政見を語った。

 安倍政権の「継承」を前面に押し出す菅氏に対し、その成果を「土台」に次の時代を考えるという岸田氏、経済社会の大転換を意味する「グレートリセット」を打ち出した石破氏。菅氏は一貫して政権運営の要にあり、岸田氏は外相や政調会長としてその一角を担った。他方、石破氏は途中から非主流派に転じた。三者三様の立場を踏まえた評価が基本にあるのだろう。

 岸田、石破両氏が首相の政治姿勢を直接的に批判することはなかった。しかし、岸田氏がトップダウンとボトムアップを使い分ける「賢い政治」をめざすという時、石破氏が自民党綱領にある「国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」という文言を繰り返し引用する時、行き過ぎた官邸主導や強引な国会運営に対する異議が込められているのは間違いあるまい。

 これに対し、菅氏の考えは明確ではない。「負の遺産」といわれる森友・加計・桜を見る会の問題についても、石破氏が国民の納得がいく説明責任が果たされていないという考えを示したのに対し、菅氏は「謙虚に耳を傾け、しっかり取り組む」などと素っ気なかった。

 7年8カ月と憲政史上最長となった安倍政権だが、特にこの1年は、政治的にも、政策的にも行き詰まりが明らかだった。そこにコロナ対策の迷走が追い打ちをかけた。この際、改めるべき点は改める。首相の交代という機会を逃すべきではない。そのためには、この総裁選で、政権総括の議論を深めることが不可欠である。

 今回の総裁選は全国の党員・党友による投票が省かれ、国会議員と都道府県連代表各3人による簡易型となった。地方票の比重は3分の1ほどに減るが、菅氏の出身地の秋田県を除く地方組織では、党員らの意向を予備選などで調べることになった。その結果を注視したい。

 一方の国会議員票の方は、党内7派閥のうち5派閥が菅氏支持を決めた。しかし、一人一人の国会議員は全国民の代表である。派閥の方針にただ従うのか、論戦の中身を見極め、主体的に判断するのか。政治家としての見識が問われる。

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