(社説)ベラルーシ 公正な選挙で出直せ

社説

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 有力な候補を締め出した選挙で、自らの圧勝をうたう。抗議デモを容赦なく力で弾圧する。もはや正常な感覚を失ったとしか思えない。

 ロシアとポーランドの間にある内陸国、ベラルーシが揺れている。26年間、大統領職を続けるルカシェンコ氏(65)が自らの地位を守ろうと、露骨な強権をふるっているからだ。

 今月に大統領選があったが、反政権派の有力者たちは逮捕されたり、立候補資格を奪われたりした。前回まで認めてきた国際選挙監視団の活動も、今回は受け入れなかった。

 排除された反政権派の妻、チハノフスカヤ氏が「公正な選挙の実施」の一点を公約にして立候補した。健闘が伝えられていたが、選挙後、選管はルカシェンコ氏が8割の得票で6選を決めたと発表した。

 多くの市民がデモに立ち上がったのも無理はない。長い圧政の間、ロシアに依存する経済は低迷してきた。最近のコロナ禍では、感染対策として「ウォッカを飲め」と勧めるなど、無策ぶりを露呈した。

 国民の街頭行動を武力で抑え込み、死傷者も出した今、政権の正当性が消失したことは明らかだ。公正な選挙をやり直して新たな指導者を選ぶほか、事態打開の方策はないだろう。

 しかし、ルカシェンコ氏は対話を拒み、政権の座に固執している。チハノフスカヤ氏が国外に逃れたこともあり、混迷は長引きそうだ。

 欧州連合(EU)は、今回の選挙結果を認めていない。注目されるのは、ロシアの出方だ。いまのところプーチン政権は、ルカシェンコ氏を引きつづき支持する姿勢をみせている。

 国民運動で指導者が退場させられる政変は、同じ旧ソ連の隣国ウクライナで起きた。ロシア国内への波及を嫌う事情がロシアにはあるのだろう。

 ロシア外相らは、ベラルーシの反政権派と欧米の結託があるかのような発言をしている。だが実際には、ベラルーシ国民の多くに反ロ的な感情はない。

 ロシアか欧米かという図式を押しつければ、国民の間に新たな分断を生みかねない。無理にルカシェンコ氏を支えれば、ロシア離れを招くだけだ。

 ロシアはベラルーシ国民の訴えに耳を傾け、EUとも協力して正当な指導者を選ぶ道筋づくりをめざすべきである。

 ベラルーシは第2次大戦で国民の約4分の1が死亡したとされる。チェルノブイリ原発事故でも大きな被害を受けた。

 歴史的な悲劇に翻弄(ほんろう)されてきた国民が、自らの手で統治を立て直すことを何より優先し、関係国が協調する必要がある。

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