(社説)熊本の豪雨 捜索と救助に全力を

社説

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 豪雨に伴う河川の氾濫(はんらん)で高齢者施設の入所者らが心肺停止となり、各地に安否を確認できない人がいる。市街地の家屋が、山あいの集落が、孤立して大勢の人が取り残された。自衛隊と消防、警察は連携し、捜索と救助に全力を尽くしてほしい。

 熊本県を中心に九州で記録的な大雨が降り、急流で知られる球磨川のあちこちで水があふれた。熊本県では、球磨村の特別養護老人ホームの入所者が巻き込まれ、人吉市の中心部は浸水、八代市では鉄骨造りの橋が流された。芦北町や津奈木町では土砂災害も起きた。

 今回の大雨は、九州付近に停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気が流れこみ、発達した雨雲が帯状に連なる線状降水帯が形成されたためとみられる。同じ場所で次々に積乱雲が発達し、長時間、雨が降り続けた。3年前に福岡・大分両県などを襲った九州北部豪雨、2年前に岡山、広島、愛媛各県を中心に広域被害をもたらした西日本豪雨もそうだった。

 気象庁は4日未明、熊本、鹿児島両県に大雨特別警報を出した。数十年に一度という、重大な危険が差し迫った状況で出す警報である。その後雨は収まって大雨警報に切り替えられたが、なお警戒を怠れない。

 捜索・救出とともに急務なのは、避難生活をしいられる住民への支援だ。新型コロナウイルスをはじめ、感染症の防止が大きな課題となる。

 被災地の一部では避難所が開設され、近隣の住民が身を寄せた。「3密」を避ける工夫とともに、消毒などの対策を徹底してほしい。大雨特別警報が出たのが未明だったため、自宅の2階などに逃げ、そのままとどまる人も少なくないと見られる。きめ細かい対応が不可欠だ。

 政府は、要請を待たずに食料や水、寝具、マスク、消毒液などの物資を送る「プッシュ型支援」を打ち出した。電力など一部地域で途絶えたインフラの復旧を含め、被災地をしっかりと支えねばならない。

 気象庁は3日午後から九州南部に警戒を呼びかけていたが、雨は4日夜明け前に急速に強まった。そうした中でも、より早く大雨を予測し、強く警告を出すことはできなかったか。球磨川ではこれまでもたびたび水害があり、人吉市などでは「タイムライン」を作成、局面ごとに行政や住民の行動計画を定めていたことで知られる。それがどう役立ち、どんな課題がありそうか。そうした検証もいずれ必要になる。

 局地的な大雨はここ数年、全国各地で相次いでいる。いざという時の備えを、一人ひとりが改めて確認しておきたい。

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