(あるきだす言葉たち)植物 紫衣

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 ■植物(フローラ)

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なつの初めに、失くした心音をもとめて。ひとりの影が黒衣を翻しその坂道を立ち去った。橋の上では、咽(む)せかえる樹陰の下でつめたくなった欄干に顔を伏せ、かたくなに黙する玉虫の死骸を握るひとの姿。足下の朽木に目を馳せる。たえず何処からか鳴り響く錆付いた扉のノック音。雨。ふりしきる…

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