(社説)入管長期収容 異様な状況を改めよ

社説

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 不法滞在などを理由に強制退去の処分をうけた多くの外国人が、入管施設に長期間収容されたままになっている問題にどう対処するか。法相の私的懇談会のもとに置かれた専門部会が提言をまとめた。

 退去を命じられた中には、国内に家族がいる、生活の基盤はもはや母国ではなく日本になっているなど、くむべき事情のある人も少なくない。保護すべき人を確実に保護し、人権をないがしろにしない。その基本に立って政策を練る必要がある。

 昨年末時点で入管施設に収容されていたのは1054人。期間は4割強が6カ月を超え、うち63人は3年以上に及ぶ。昨年6月には、長崎県内の施設で長期収容に抗議してハンスト中のナイジェリア人男性が餓死する痛ましい事件もあった。

 長引く理由として出入国在留管理庁は、難民認定の手続き中は送還できないとする規定があり、申請を繰り返す者が多いからだと説明する。そこで提言は、認定されなかった人が新たな事情がないまま再申請した場合などは、送還可能とすることを検討するよう促した。

 だが日本の難民認定をめぐっては厳格すぎるとの批判が絶えず、再申請を制度の乱用と切り捨てられぬ現実がある。実際、18年までの3年間に難民認定された90人のうち8人は、いったん強制退去処分を受けた後に、事情の変化などを理由に認められた。これとは別に、処分後に「人道的配慮」で在留を許された人も、同じ期間に85人いた。人を取り巻く環境は常に変わりうることを示すものだ。

 法相の私的懇談会には難民認定に関する専門部会もあり、6年前、条約上の難民に当たらなくても国際的に保護の必要性がある人に、在留を認める枠組みを設けるよう指摘している。手つかずになっているこの措置の実現が先ではないか。

 今回の提言には、送還を拒む行為を罰則の対象とする考えも盛り込まれた。だが問題の解決にはなるまい。むしろ、住居や食事を提供する支援者の行為が「共犯」に問われかねないことになり、事態をいっそう複雑にしてしまう恐れがある。

 収容が一定の期間を超えた場合、継続の要否を判断する新たな制度を設けるなど、実施を急ぐべき提案もある。独立した第三者機関が調べて相当と判断すれば、施設外での生活を認めるなどの方策を検討してほしい。

 被収容者の中には、この国に溶け込み、社会を支えてきた人も大勢いる。そうした「人材」の追い出しに力を注ぐ一方で、外国人労働者の新規受け入れを唱える。このちぐはぐな政策を総合的に見直すときだ。

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