(社説)地方選公営化 なり手不足 対策さらに

社説

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 候補者が少なく、無投票が相次ぐ町村長と町村議員の選挙の現状を、公営化で少しでも改善しよう。そんな公職選挙法改正が、先の国会で実現した。

 自治体の判断で、選挙用自動車、ポスター、政策ビラ作成の3点セットに公費負担を導入できる内容だ。

 「なり手不足」の打開への一助になることを期待する。

 昨年の統一地方選では、全国121町村長選の46%、375町村議選の総定数の23%が無投票だった。候補者が定数割れした議会も8カ所あった。

 もはや民主主義の危機といえる状況を踏まえた法改正は議員立法でなされ、とくに町村議選に関する2点が目新しい。

 これまで配布が認められてこなかった政策ビラを、公営化に合わせて解禁した点と、供託金15万円の新設だ。

 ビラは3年前に都道府県議選と市区議選で認められた時からの懸案だった。候補者1人あたり最大1600枚を配れるようになる。

 ただ、町村長選と町村議選では、いまも5割以上の自治体が選挙公報をつくる条例すら定めていない。今回の公費負担も条例が必要だが、制定しない自治体が出る可能性がある。

 しかし、握手と名前の連呼で選んでもらう時代は終わっているはずだ。地域のめざすべき将来像や、そのための道筋を明示したビラを配り、有権者に訴える。法改正を、そんな選挙を実践するきっかけにしてほしい。

 供託金の新設は、国会で賛否が分かれた。主な目的が売名行為での乱立防止だから、「なり手不足」の町村議選には要らないし、15万円が新たなハードルになり逆効果だといった反対論には一理ある。

 衆参両院の選挙区や知事選の300万円など、世界でも異例に高額な供託金には引き下げ論や廃止論も根強い。今後もあり方を検討すべきだろう。

 そもそも、地方議員の不人気の理由は多岐にわたる。女性や若い議員の少ない「老老男男」の議会構成への不信感、情報公開の少なさ、報酬額の低さなどは全国共通の課題だ。

 対策も、出産・育児休業制度の充実、休日や夜間開催、住民の理解を得ての報酬引き上げなどが指摘され続けてきた。

 首相の諮問機関の地方制度調査会も、地方議員の現状を議論してきた。近く首相に手渡す答申では、公務員の立候補制限や議員との兼職禁止の緩和などを、行政の中立性・公平性に配慮しつつ検討する必要があると指摘している。

 今回の法改正に続けて、さまざまな対策を講じてゆくことが求められている。

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