(社説)追加雇用対策 スピードと実効性を

社説

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 新型コロナウイルスの影響による雇用情勢の悪化を受け、政府が追加の対策を決定した。

 緊急事態宣言が全国で解除されたとはいえ、経済活動の本格的な回復には時間がかかる。雇用を取り巻く状況は引き続き厳しいとみるべきだろう。

 実態に即して迅速かつ臨機応変に対応し、実効性のある対策にしなければならない。

 追加対策の柱は、休業手当を受け取ることができていない中小企業の従業員が、ハローワークに直接申請し、給付を受けられるようにする特例制度の新設だ。月額33万円を上限に賃金の8割を払う。

 資金繰りに余裕がなかったり煩雑な手続きに対応できなかったりして、助成金を申請せず、休業手当を払っていない事業主は少なくないとみられる。休業を余儀なくされながら手当を受けていない働き手の救済は課題だった。応急措置として特例を設けることは理解できる。

 ただ、給付金が出るのをよいことに、休業手当を払わない事業主が増えるようでは困る。

 労働基準法は、雇い主の都合で働き手を休ませる場合の休業手当の支払い義務を定めている。新たな給付金はそれを肩代わりするものでも、事業主の支払い義務を免じるものでもない。そのことを周知徹底するとともに、モラルハザードを生まないための方策についても検討する必要がある。

 給付金の対象は中小企業の従業員とされているが、大企業でも非正規雇用の従業員にだけ休業手当を支払わないなどの事例がみられる。きちんと対応するよう徹底するべきだ。

 給付金の具体的な申請方法など、詳細な制度設計はこれからだ。簡便な手続き、速やかな支給を心がけてほしい。

 追加対策では、従業員に休業手当を支払う企業への助成金の上限も、現在の1人当たり日額8330円から同1万5千円に引き上げる。企業の負担を軽減し、利用を促す狙いだ。

 企業への助成金は、対象も助成率もすでに大幅に拡充されているが、見直し内容が十分に知られていなかったり、手続きが滞ったりと現場の混乱が続いている。本来の助成制度がもっと活用されるよう、手続きのさらなる簡素化や対応する人手の増員なども急務だ。

 コロナ禍で職を失う人は急増している。失業した人が次の仕事を見つけるまでの期間が長期化するのに備え、一定の条件を満たす場合の失業手当の支給日数も60日延長することにした。それだけにとどまらず、次の仕事にスムーズに移れるような支援も、雇用の維持と両輪で進めたい。

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