(社説)関西の解除 知事の切磋琢磨さらに

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が、大阪、京都、兵庫の2府1県で解除された。既に解除されている39県に次ぐ動きで、宣言が続くのは首都圏の1都3県と北海道になった。

 解除された府県を中心に生活や経済活動を元に戻していく取り組みが進むが、コロナ感染が収束したわけではない。状況は地域ごとに異なるだけに、自治体、とりわけ国とともに大きな役割を担う都道府県知事のかじ取りが重要になる。

 外出自粛や休業の要請。医療体制の整備。家計や事業者への支援策……。コロナ禍が深刻になるにつれ、メディアやSNSで住民に訴える首長の姿が日常の光景になった。共通の政策をめぐり、構想力や実行力、発信力が比較され、評価される。かつてなかった状況だろう。

 大きな注目を集めているのは、大阪府吉村洋文知事だ。三つの指標からなる「大阪モデル」を作り、国による緊急事態宣言解除を待たずに外出自粛・休業要請の緩和を進めるなど、独自性が際立つ。病床の確保や検査体制をはじめとする医療面でも、他地域の参考になる素早い対応が目に付く。

 東京都小池百合子知事は、独自の標語もまじえながら頻繁に発信を重ねる。国に先がけて学校の休校や独自の緊急事態宣言に踏み切った北海道の鈴木直道知事、病院でのコロナ患者発生を受けて幅広く検査を実施した和歌山県仁坂吉伸知事ら、国や他の自治体の政策に影響を与えた判断は少なくない。

 もちろん、評価される事例ばかりではない。認識の甘さを露呈したり、国の動きを待つばかりだったりして、厳しい視線にさらされた知事もいる。コロナ対策で地名を冠した「○○モデル」が広がったように、首長が互いに学び、競うように切磋琢磨(せっさたくま)する。それを住民が評価する。その積み重ねは地方自治の強化につながるはずだ。

 課題もある。対策の初期では、吉村大阪府知事が唐突に兵庫県との往来自粛を打ち出したり、小池東京都知事都市封鎖を連想させる「ロックダウン」を口にしたりと、隣県との調整や十分な説明を欠いた例があった。最近は全国で圏域ごとの知事会議が開かれているが、これを機に広域での協力態勢を深めていきたい。

 国もまた問われる。全国知事会はコロナ対策で次々と提言を出している。それをしっかりと受け止め、基盤となる全国共通の施策を整えながら、自治体が工夫できるよう権限と財源を任せるべきだ。分権改革を経て国と地方は対等になったことを忘れてはならない。

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