(社説)新型コロナ 途上国へも目配りを

社説

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 ウイルスに国境はない。たとえ先進国で封じ込めに成功しても、それだけでは不十分だ。医療態勢の弱い途上国で感染が広がらないよう、国際社会全体で協力することが欠かせない。

 国連は先月下旬、途上国や紛争地域などで新型コロナウイルス対策に取り組むため、20億ドル(約2200億円)の人道支援を各国に要請した。

 対象はアフリカやアジア、南米、中東の貧しい国々や難民キャンプだ。世界保健機関(WHO)や国連難民高等弁務官事務所UNHCR)など国連機関と国際NGOが協力し、医療器具や医薬品を提供する。

 こうした国々は衛生状態が悪く、医療施設も整っていない。感染が爆発的に広がり、先進国を含めた世界全体にとって新たな脅威となる恐れがある。

 グテーレス国連事務総長は「第2次大戦以降で最も困難な危機だ」と訴えた。国際社会はその言葉を正面から受け止め、協調を強める必要がある。

 とりわけ懸念されるのがアフリカだ。アフリカ大陸で初の感染者が確認されてから約1カ月半でほぼ全ての国に広がった。感染者は全体で7千人台と、欧米に比べ少なく見えるが、検査態勢の不備を考えれば実態はより深刻だとみるべきだろう。

 先日開かれた主要20カ国・地域(G20)の首脳会議は「アフリカの保健システムを強固にすることが、世界的回復へのかぎだ」と声明でうたった。その考えを実行に移したい。

 感染症対策の基本とされる手洗いだが、アフリカでは水の確保が困難だ。ユニセフによると、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国では、都市部の3人に2人、約2億6千万人が手洗いに必要な水やせっけんが手に入らないという。子どもたちを中心に慢性的な栄養不足も深刻だ。

 こうした環境もあって、アフリカでは感染症との闘いがかねて日常化している。エイズ、結核、マラリアの3大感染症に加え、エボラ出血熱も流行が続く。そこに新型コロナが加われば、さらに重荷が増える。

 日本は四半世紀以上前にアフリカ開発会議を立ち上げ、関係を深めてきた。昨夏の第7回会合では、保健医療分野での貢献も改めて表明した。国内で新型コロナ感染が急増しており、経済への深刻な影響も懸念される。その対策を十分に図りながら、途上国で苦しむ人々への目配りも忘れないようにしたい。

 各国が自国での対策に注力することは当面必要だろう。だが長い目で見れば、それだけで感染症問題を克服することはできない。グローバル化した世界で感染症にどう向き合うか、国際社会が問われている。

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