(社説)緊急経済対策 長期戦に安心の備えを

社説

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 新型コロナウイルスの感染者が、東京など国内でも大幅に増え続けている。安倍首相は先週末の会見で「いつコロナとの闘いが終息するのか、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいない」と述べ、国民には長期戦の覚悟を求めた。

 休日や夜間の外出自粛が要請されるなど、生活をとりまく不安は色濃くなるばかりだ。

 政府は来週にも第3弾の緊急経済対策をまとめる。長期戦ならば、人々の働く場と日々のくらしをしっかり守る決意を政策で示し、国民が安心を感じられるようにする必要がある。

 具体策として、収入が急減した世帯や中小企業に向けた給付金が検討されている。納付期限のある税の支払いは1年間猶予し、赤字企業も負担する固定資産税は減免する。住宅ローン減税の条件も見直す。

 首相は「社会的な不安が払拭(ふっしょく)された段階で、一気に日本経済をV字回復させる」ともいう。しかし、飲食店やホテル、イベント会社などでは客数や売り上げが大きく落ち込み、長引けば事業の継続すら危ぶまれる。

 「損失を税金で補償することはなかなか難しい」と突き放すだけではなく、これまでに拡充した融資制度も状況に応じて返済を不要にするなど、さらなる工夫を重ねるべきだ。

 資金繰り支援の窓口には、相談が殺到しているところもある。制度を整えたうえで、きちんと対応できる態勢づくりにも目配りが欠かせない。

 自治体も、政府の支援を補完する対応を進めている。

 大阪府枚方市鳥取県は、休校などで子どもの世話をするため仕事を休んだ親への支援について、対象を政府より広げる独自の制度を決めた。宮城県富谷市は、内定を取り消された学生を市の1年任期の職員に採用しようと、募集を始めた。状況の変化や地域の実情に応じ、きめ細かな対応を考えてほしい。

 緊急経済対策について、首相は「リーマン・ショック時を上回るかつてない規模」とし、自民党も提言案で財政支出を20兆円と打ち出した。しかし、いま大切なのは総額ではなく、困っている人々に確実に、支援の手を差し伸べることだ。

 党内には、消費税の減税を求める声が根強い。しかし、事業者の手間なども踏まえれば、手をつけるべきではない。

 提言案には、マイナンバーカードを持つ人へのポイント還元の増額や、観光地での宿泊割引なども並んだ。終息後をにらんだ特定の業界への利益誘導が先に確約されて、真っ先に専念すべき緊急性の高い生活支援や雇用対策が後手に回ることは、決してあってはならない。

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