(社説)感染症と学校 安全と日常 両立探って

社説

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 突然の全国一斉休校から2週間になり、当初からのさまざまな懸念が現実になっている。

 子どもが登校できないことで保護者の仕事が制約される。非正規雇用のひとり親をはじめ、多くの人が家計の悪化や雇用の不安に直面している。

 新型コロナウイルスの流行が長期化する見通しとなった今、感染拡大の防止と生活・心の安定との均衡をどう図るか、冷静に考え、実践する必要がある。新学期に向け、地域ごとに流行の様子を見ながら、多くの人が納得できる方策を探りたい。

 このところ、いくつかの地域で休校解除の動きが出てきた。

 たとえば兵庫県明石市は、あす16日から市立の学校と幼稚園を再開する。「働きに出られない」「子どもが日中過ごせる場所がない」といった家庭の実情を重くみた。児童生徒に毎日検温させ、教室は1時間に1回換気するなどの対策を施す。登校しなくても欠席扱いにしない。現実的な判断といえよう。

 静岡市浜松市なども、同日から休校を解除する方針だ。大阪市春休みに中学の部活動を再開し、新学期から小中学校と幼稚園を開きたいという。

 もちろん状況が変われば判断を見直す柔軟さが求められる。当初、登校を続けていた群馬県太田市などは、感染者の発生を受けて休校に転じている。

 直ちに再開に踏み切れなくてもできることはある。茨城県つくば市は、休校中も小中学校を開放し、希望者は登校しても良いことにした。机の間隔をあけて座り、給食は向かい合わせで食べないように配慮する。

 利用者は4割弱。給食を希望制にしたところ、大半が申請した。各家庭が昼食準備に困っている現実を映す。同市に限らない。生活が苦しく、給食に栄養を頼っていた子は、もっと深刻な環境にいるに違いない。

 子どもの受け皿としては学童保育もある。だが多くは給食がないうえ、狭い部屋に大勢が集まるので、かえって感染が心配だという声も聞く。学校開放はもっと検討されていい。

 子ども食堂も多くが休止を強いられている。問題は食事だけでなく、子に居場所を提供できないことだという。貧困対策の学習支援も活動が止まる地域が出ている。こうした安全網のゆらぎは親子の心身の健康を害し、虐待リスクを高める。徐々に平常に戻す道を探りたい。

 残念なのは、公園で遊ぶ子にも目くじらを立てる人がいることだ。屋外での運動や散歩まで過剰に制限する理由はない。大人が冷静さを失えば、子どもを動揺させるだけだ。

 完璧な安全などない。心を広く持って長期戦に備えよう。

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