(社説)関電第三者委 「闇」の解明が問われる

社説

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 多額の金品受領の見返りとして、工事発注の手続きや金額がゆがめられたことは本当になかったのか。そうした疑問をはじめ、問題の全容と背景の徹底解明が求められる。

 関西電力役員らの金品受領問題で設置された第三者委員会(委員長=但木敬一・元検事総長)の調査が続いている。関係会社を含む役員と社員を聞き取りや書面で調べ、既に退職した人にも情報提供を呼びかけた。

 関電は昨秋に第三者委を設けた際、会長らが辞任するとともに岩根茂樹社長も報告を受け取り時に退くとし、年内にまとめるよう求めた。これに対し第三者委は調査の越年を表明。関電の原発がある福井県高浜町の元助役で、関電側に金品を贈っていた故森山栄治氏が関係した企業にかかわる工事資料を提出するよう、全社員に求めたことも明らかになった。

 調査を尽くすことが第三者委の務めだ。関電は期限を設けるような姿勢を厳に慎み、全面的に協力しなければならない。

 関電が一昨年に行った社内調査によると、会長と社長を含む20人が元助役から計3億2千万円分の金品を受け取っていた。高浜3、4号機の誘致に深く関わったという元助役は1987年に退任後、原発事業を支える土木建築、警備、メンテナンスの各企業で役員や顧問を務めており、複数の関電関係者が「『うちの会社をよろしく』と言われた」と証言している。

 社内調査は元助役関連の会社への発注について「適正だった」としたが、実際はどうだったのか。金品の受け取りについても、社内調査があげた20人以外に、15人の元役員らが朝日新聞の取材に受領を認めた。全体像に迫る作業は怠れない。

 関電の企業統治の問題点を指摘することも、第三者委が果たすべき役割である。

 関電は社内調査の結果について取締役会で議論せず、報道されるまでの約1年間、公表しなかった。監査役会も、問題を把握しながら取締役会に報告しなかった。

 一連の不透明な対応の裏に、隠蔽(いんぺい)の意図や行為がなかったのか。関電は、こうした経営判断を追認していた幹部の中から次期社長を選ぶ方針と伝えられるが、第三者委は厳正に検証しなければならない。

 今月には、元助役と関係が近かったという福井県内の建設会社が、九州電力の原発がある佐賀県玄海町の町長に現金を贈っていたことも発覚した。

 金品受領の闇は、どこまで広く、深いのか。関電の株主が役員らの責任追及に動き、市民グループも刑事告発した中で、まずは第三者委が問われる。

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