(10代の君へ)自分の心、観察してみて 一ノ瀬メイさん

10代の君へ

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 10代のころを振り返ると、目の前のことをこなすのに精いっぱいでした。19歳のとき、初めてパラリンピックに出場。注目されて取材をたくさん受けましたが、8種目に出場して、リレーで6位に入賞しただけ。結果は出ていないのに私の名前ばかりが表に出て、実力とかけ離れた期待に焦りが募りました。

 水泳は、スタート台に立ったら一人です。私はそれがとても不安でした。振り返ると、私はいつも周りの人の顔色が気になり、誰かの目に映る自分の姿しか見ていなかった。練習はしているのに、レース前は「自分に強みはないんじゃないか」と、自信を持てなかったんです。

 近畿大学を卒業した昨春から、オーストラリアのチームで練習を始めました。渡豪した当初、私はチームメートとの食事の席で「自分は結果が足りていない」と、泣いてしまいました。するとみんなが優しくハグしてくれて、ある選手が言いました。「なんでパラリンピックに出場しているのにそんなこと言うの? 俺なんか町内で1番ぐらいだけど、それを誇りに思っているよ」。本当はトップ選手なんだけど、そんな言葉をかけてくれて、ハッとしました。

 私は9歳で水泳を始め、パラリンピックに出場することが夢でした。たとえメダルがなくても夢をかなえたこと、そして2020年東京大会を目指してやってきたことをシンプルに誇りに思っていいんだ、と思えました。「周りがどう思おうが関係ない。大事なのは自分が自分をどう思うかなんだ」と、リオ大会後から常に心を支配されていた焦りを整理できました。

 人生の選択をするとき、自分を知っていることは強みになります。何をしているときにワクワク、ドキドキするか。普段から自分自身と向き合えていれば、好きなことも、やらなければいけないことも簡単に見つかると思います。

 10代のみんなには、自分の心の動きをたくさん観察してほしいです。(聞き手・斉藤寛子)

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 いちのせ・めい パラスイマー。1997年、京都市生まれ。先天性の右前腕欠損症。2016年リオデジャネイロ・パラリンピックの水泳日本代表

 ■オススメの集中法

 ヨガ。オーストラリアで週3回ほど教室に通っています。

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 自分との向き合い方、緊張や焦りの解消法を学びました。

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