(社説)習主席来日へ 国賓で迎えるためには

社説

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 世界で影響力を増す中国と、日本は今後どんな関係をめざすのか。対立でも迎合でもない、複層的で健全な隣国関係を生み出す機会ととらえるべきだ。

 安倍首相習近平(シーチンピン)国家主席がきのう北京で会談した。今夏の大阪での会談に続き、「新時代にふさわしい関係」(習氏)をめざす姿勢で一致した。

 これまでの計画どおり、来年春に習氏を日本に国賓として招く方針が確認された。国家主席の国賓訪問は08年の胡錦濤(フーチンタオ)氏以来、12年ぶりとなる。

 近年の日中関係の激しい浮沈を考えれば、首脳往来が堅調に進むいまの環境は貴重である。世界第2と第3の経済大国として、国際秩序の安定をめざす大局的な対話を深めたい。

 中国が日本への態度を和らげた背景には、米国との覇権争いがあるのは間違いない。中国経済の伸びが減速していることもあり、日本を引き寄せておく考えに傾いているとみられる。

 巨大市場を持つ中国との良好な関係は日本経済にもプラスだが、習氏来日の際に両国がめざす合意事項は、そうした近視眼的な思惑や融和ムードの演出で終わらせてはならない。

 米中関係次第で揺れるような脆弱(ぜいじゃく)な関係から脱却し、懸案ごとに率直に討議できる関係が築けるかが問われている。

 たとえば中国の開発構想「一帯一路」と、日本のアジア支援とが補完しあうには、どんな調整が必要か。日米の「自由で開かれたインド太平洋」構想との衝突を避ける信頼醸成措置は何が可能か。自由貿易の枠組みを話し合うのも有意義だろう。

 もちろん、そうした論議を詰めるうえで、正面から向き合うべき対立点が多い。

 両国間で根本的に異なる自由と人権、民主主義の原則で、日本は主張を貫くことがすべての前提である。香港と新疆ウイグル問題について、安倍氏はきのう、積極的に懸念を伝えたと日本側は説明している。今後、もし日本側が言を濁すならば、国内外から不信の目を向けられることを忘れてはなるまい。

 そして東シナ海問題である。尖閣周辺では今年、接続海域に入った中国公船が延べ1千隻を超え、過去最多となった。これでは両国関係が「正常な軌道に戻った」(安倍氏)とは、とても言えない。

 日本国内には、さまざまな理由で「国賓」招待を疑問視する声が出ている。日本の世論の対中感情も改善しないままだ。その主な理由はやはり習近平体制の強権体質にある。

 日本の国民が来春、わだかまりなく習氏を歓迎できるか否かは、中身の濃い外交成果が望めるかどうかにかかっている。

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