(社説)骨太の方針 負担論議から逃げるな

社説

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 政府は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)と、成長戦略閣議決定した。2度にわたり延期された消費増税の10月実施を控え、その先を見据えた議論を始めるための節目の基本方針だ。

 だが、示されたメニューは比較的異論が少ないものばかり。難題に向き合おうという政権の意気込みは感じられない。これでは「骨太」の名に値しない。

 政府は昨年、政策経費を新たな借金に頼らずに賄えるかを示す基礎的財政収支を黒字化する時期の目標を、従来の20年度から25年度へ遅らせた。新たな基本方針もこれを踏襲。10月の消費増税は明記したものの、黒字化の道筋は描いていない。

 主な政策課題として念頭にあるのは、人手不足と長寿化だ。

 病気や介護の予防に力を入れ、元気な高齢者の働き手を増やす方向を打ち出した。その柱として、70歳までの就業機会を確保する。年金制度も就労意欲を阻害しないように改めるとして、働いて一定以上の収入があると年金が減額される仕組みの見直しや、年金の繰り下げ受給拡充などを示した。

 30~40代の就職氷河期世代に対する支援を強化し、この世代の正規雇用を30万人増やすという。最低賃金を引き上げ、早期に全国平均1千円とすることも目指す。

 目標を掲げるのは結構だ。だが、大事なのは、それをどう実現するのかだ。参院選向けのスローガンでは困る。

 働き手を増やすのも、高齢者の健康づくりも、大切な取り組みではある。しかしそれだけで、膨らむ社会保障費を賄うことはできない。給付を抑えるための施策と、必要な財源を確保するための税や社会保険料の引き上げのバランスを、どうとるのか。負担の論議から、いつまで逃げ続けるのか。

 そもそも、10月の消費税率10%への引き上げは、財政の土台に開いた穴を埋めていくための一歩に過ぎない。団塊の世代がすべて75歳以上になる25年度以降の備えは、これから考えるべき課題だ。

 政府は昨年5月、65歳以上の人口がほぼピークに達する40年度の社会保障給付費の推計を公表した。消費増税後の財政と社会保障の姿を議論する土台となるデータであるにもかかわらず、1年以上放置してきたのは、怠慢と言うほかない。

 人口減少、超高齢化が進むと、日本経済はどのような姿になるのか。その時に社会保障の給付と負担はどんな選択肢があるのか。参院選に向けてしっかり論じてこそ、将来不安を拭うこともできる。目を背けていてはならない。

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