(社説)東海第二原発 「茨城方式」が問われる

社説

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 相手の同意を得るめどがたたないのに、「見切り発車」で原発を動かす準備を進め、外堀を埋めていく。そんなやり方では、地元の不安や疑問は深まるばかりではないか。

 東海第二原発茨城県)の再稼働をめざす日本原子力発電(原電)が、地元で住民説明会を始めた。原子力規制委員会の審査結果や、新規制基準に対応する安全対策工事について説明し、理解を広げるねらいだ。

 原電は昨年、地元6市村と安全協定を結んだ。再稼働について、協定は「事前協議で実質的に事前了解を得る」と定める。ただ、6市村すべての同意が必要なのか、肝心の点がはっきりせず、原電と6市村の間で解釈の食い違いが表面化している。

 地元側には「1市村でも納得しなければ再稼働に進めない」との受け止めが多い。しかし、原電は「とことん協議する」などと、あいまいな態度を続け、不信を招いている。

 事実上の同意権を、県と立地市町村だけでなく、周辺まで広げた「茨城方式」は、今の再稼働手続きの欠陥を正すうえで、意義が大きい。事故のリスクや避難対策を負わされる周辺市町村が、関与を望むのは当然のことだ。原発がある他の地域も茨城の動向を注視する。

 原電が新協定を結んだのは、広く地元の信頼を得るためだったはずだ。6市村の意向に沿って運用しなければならない。

 新協定で同意のハードルは大幅に上がり、6市村との協議をどう進めるかも見えない。それでも原電は今後、安全対策工事を本格化させる構えだ。再稼働に向けて既成事実を積み重ねるような姿勢は、地元に対し不誠実だと言わざるを得ない。

 東海第二は東日本大震災で被災した古い原発で、住民らの不安は根強い。県内市町村の半数以上で、議会が再稼働に反対する趣旨の意見書などを可決した。30キロ圏内の人口は全国の原発で最多の94万人にのぼり、市町村の避難計画づくりは難航している。県も独自に安全性の検証作業を続けている。

 原電は地元の不安や要望に真摯(しんし)に向き合い、自治体や住民らとの対話に注力すべきだ。

 工事を進めると経営上のリスクや責任も生じる。

 少なくとも1740億円と見込まれる費用を、経営難の原電は自力で調達できず、株主の東京電力などに支援してもらう方針だ。福島の原発事故を起こして実質国有化された東電には、とりわけ重い説明責任がある。

 地元同意を得られなければ、この巨額の資金は無駄になる。その場合、関係各社の経営陣は、結果責任を厳しく問われることも忘れてはならない。

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