相手の個人情報を与えたAI は人より説得力高い 偽情報拡散に警鐘

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水戸部六美
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 AI(人工知能)に相手の個人情報を与えてオンライン討論をさせると、人間よりも説得力が高い――。そんな研究結果をスイス連邦工科大学ローザンヌ校などの研究者チームがまとめた。「偽情報キャンペーンにAIを使った説得が広がらないよう対策を強化すべきだ」と警鐘を鳴らす。

 商品の販売から選挙、公衆衛生のキャンペーンまで、相手の信念や意見を変えさせる「説得」は重要だ。近年はソーシャルメディアを使って個人に最適化したメッセージを送り、説得力を高める手法が広がっている。

 こうした手法で力を発揮するとみられるのが、ChatGPTチャットGPT)のような生成AIだ。大量の文章データをもとに、人間の言語と推理をまねるように訓練されていて、流暢(りゅうちょう)で文脈に適した文章を簡単に生み出す。

 例えば、チャットGPTに「中絶に反対する理由」を尋ねると「中絶は胎児の命を奪う行為」「人間の命の尊厳を守る立場から反対される」といった答えが返ってくる。しかし、「10代の日本の女子大学生が読む想定で」と個人情報を含んだ指示を出すと「おなかの中の赤ちゃんも一つの命です」「命の重さを考えて行動することが大切です」など、共感や丁寧さを重視した表現に変わる。

 こうした能力は、ネット上での「会話の操作」や「誤情報の拡散」に使われるおそれもある。実際、チャットGPTを開発・運営する米オープンAIが2024年にまとめた報告書には、イランの勢力が米大統領選への介入を狙ったとみられる記事をAIで作っていた事例などが載っている。

死刑や中絶など、人間とAIが討論

 そこでチームは、人間とAI(GPT4)とのオンライン上での「説得力」を比べた。

 具体的には、文章で1対1の…

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    鳥海不二夫
    (東京大学大学院教授=計算社会科学)
    2025年5月22日15時7分 投稿
    【視点】

    もともと広告業界では、マイクロターゲティングと呼ばれる、個人の特徴に特化した形で広告を配信する手法が選挙の際などに使われ、問題視されていました。LLM(大規模言語モデル)と個人の属性を組み合わせることによって、より説得力の高い情報が作り出さ

    …続きを読む