ピルルルルルケッキョケッキョ…… ウグイスの谷渡り鳴きの新説浮上

有料記事

桜井林太郎
[PR]

 野山にウグイスの鳴き声が響く季節。「ピルルルルルケッキョケッキョ……」。雄が繁殖期に発する特徴的な「谷渡り鳴き」は、天敵などの存在を仲間に知らせるための警報だと考えられてきたが、雌へのアピールではないかという新しい仮説が打ち出された。

 提唱したのは国立科学博物館の浜尾章二・名誉研究員(行動生態学)。動物学の専門誌に発表した。

 ウグイスといえば、雄が「ホーホケキョ」と鳴くさえずりが有名だが、長ければ1分以上続く「谷渡り鳴き」も知られている。人が急に姿を現した時や、タカが飛んでいる時などに聞かれることを、多くのバードウォッチャーらが経験しており、従来は危険を知らせる警報だろうと言われてきた。

 だが、危険を知らされた仲間が本当に身の安全を図っているのか。谷渡り鳴きした雄にとっては、鳴かない方が自分の存在を知らせず、むしろ安全なはずなのに、何の得があるのか。実態はよくわかっていない。

 浜尾さんは1990年からウグイスの繁殖や生態を研究してきた。繁殖期の雌は「チーチー」と弱い甘い声を出すが、その直後や雌がよくいるところで、雄が谷渡り鳴きをしているのではないかと経験的に感じていた。

 そこで、雌が近くにいるときに雄が実際に谷渡り鳴きをしているのか。鳴き声を聞いた雌は何をしているのか、本格的に調べた。

 調査場所に選んだのは、ウグ…

この記事は有料記事です。残り1207文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
桜井林太郎
くらし科学医療部
専門・関心分野
環境・エネルギー、先端技術、医療、科学技術政策
  • commentatorHeader
    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2025年5月8日11時1分 投稿
    【視点】

    ウグイスの多彩な呼び名のなかには、経読(きょうよみ)鳥や歌詠(うたよみ)鳥のように、鳴き声からくる異名もある。俳句の季語の世界には、昔からの美意識や季節の感覚が生きている。この記事をきっかけに、そんな話にもなりそうだ。

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    板倉龍
    (科学雑誌Newton編集部長)
    2025年5月8日14時20分 投稿
    【視点】

    実際のウグイスの2種類の鳴き声を記事の中で聞き比べることができて,素晴らしいですね。学術論文へのリンクが張られていることを含めて,デジタル版ならではの科学記事のあり方だと感じました。この連休に北関東の温泉地を訪れて,木々に響くウグイスのさえ

    …続きを読む