人生の最期、何を大切にしたい?団地の高齢者、カードゲームで考えた
【神奈川】もしも余命が半年とわかったら、あなたは何を大切にしたいですか――。こんな問いにカードゲームをしながら答える「もしバナゲーム」を、高齢化が進むニュータウン「若葉台住宅」(相模原市緑区)の住民が体験した。大切な人に別れを告げるか、お金の問題に始末をつけるのか。他の人の選択も見ながら、人生の最期を考えた。
もしバナゲームは米国発祥で「もしものための話し合い」の略。千葉県鴨川市の「亀田総合病院」の医師らが普及を進めた。元気なうちに終末期の意思決定などについて家族や友人と話し合う「人生会議」を疑似体験できるとして、各地の介護施設などでも利用が広がっている。
4月上旬、地区の自治会館に約20人の住人が集まった。藤野在宅緩和ケアクリニック(相模原市緑区)の石橋了知医師が指導役だ。
ゲームに使う36枚(予備の1枚を除く)のカードには、人生の最期に望むことが一つずつ書かれている。
「清潔さが維持される」「呼吸が苦しくない」「意識がはっきりしている」「大切な人とお別れをする」「家族の負担にならない」「ユーモアを持ち続ける」などだ。
4人1組になり1人5枚の手札を持つ。メンバーで手札を交換しながら、自分の目指す終末期にふさわしい手札をそろえる。
残したいと思っていた札もゲームの局面で捨てるしかなかったり、取りたいと思った札を別の人に取られてしまったり。思うようにならない場面も疑似体験する。
「そこで選択を変更することで、自分の本当の気持ちに気づける」と、会を企画した住民で「若葉台住宅を考える会」の柳井正晴代表。
ゲームでは、最後まで残した3枚と捨てた2枚を披露し、参加者同士で理由を話し合う。この日、多くの参加者が選んだカードは「家で最期を迎える」だった。
「介護していた父親を家でみとったが、とても安らかだった」「家が自分の人生で大事な場所だから」と、参加者が率直な思いを話した。
田村須美子さん(75)は、最初は「家族の負担にならない」の札を残していたが、途中で捨てた。「長くて3カ月ぐらいなら、負担をかけてもいいかなって。感謝の気持ちでおだやかに旅立つ方がいいわ」
石橋医師は「途中で気が変わってもいい。自分が大切に思っていることを知人や家族に知ってもらうきっかけになればいい」と話した。