私はこれで240万円振り込ませた…コールセンター詐欺、男性の悔恨

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武石英史郎

 愛知県の男子高校生(16)が働かされていたという国際詐欺の拠点は、幅5メートルほどの国境の川を挟んだ対岸のミャンマー東部ウォーレイ村に立っていた。

 タイ西部の拠点都市メソトから車で1時間あまり。焼き畑農業で森を焼く煙が立ちこめる辺境の地だ。

 衛星写真でみると、広大な敷地に10棟ほどの大きな建物が並ぶ。地上から見ると、高さ3メートルほどの塀で囲まれ、その上に1.5メートルほどの有刺鉄線が張られている。塀の上に設置されたカメラは敷地の外側ではなく、内側を監視している。

まるで「サティアン」 異様な光景

 高床式の木造家屋がほとんどの寒村の風景とは、あまりに不釣り合いな巨大な建物群。約30年前、オウム真理教取材の応援で訪れた山梨県旧上九一色村で見た「サティアン」の異様さを私は思い出した。

 1棟の屋根には衛星電話のアンテナとみられる白いパネルが10基以上並んでいる。中国系マフィアが運営する詐欺組織は衛星回線を使っていたとされる。

 敷地の中から時折、中国語が聞こえてきた。塀の上からは兵士の服装をした男がこちらの様子をうかがっているのが見えた。

 「あそこは元々カジノだった。コロナ禍の後、詐欺のコールセンターに変わった」と現地で国境警備に当たるタイ軍の担当者が言った。

 敷地内に入ったことがあると…

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この記事を書いた人
武石英史郎
アジア総局長|東南アジア・南アジア・太平洋担当
専門・関心分野
アジア、グローバルサウス
ミャンマー拠点詐欺

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