第3回「なぜ妻が犠牲に」の答えは 電車脱線の背景に連鎖した組織要因

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千種辰弥 瀬戸口和秀

【連載】命と教訓 JR宝塚線脱線事故20年

  JR史上、最悪の惨事となったJR宝塚線脱線事故から25日で20年になる。妻を奪った事故の原因を追究し続けた男性は「命の代償として、教訓を社会に根付かせてほしい」と願う。遺族やJR西関係者への取材、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の報告書などに基づき、事故はなぜ起きたのか、教訓は生かされているのかを追った。

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 JR宝塚線(福知山線)脱線事故から4年半余り。遺族とJR西日本が共同で事故原因を検証する異例の会議が始まった。事故で妻と妹を亡くした浅野弥三一が求めたのは、「なぜ家族が死ななければならなかったのか」という問いを、とことんまで突き詰めることだった。

 事故の直接的な原因は、運転士がブレーキをかけ遅れ、制限速度を超過してカーブに進入したことだと国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の調査で分かっている。しかし浅野は、ブレーキの遅れという個人のミスの背景に、JR西の組織的な問題があると考えていた。

 共同検証は2014年まで足かけ6年、二つの会議を重ね、計27回開かれた。遺族がJR西側の説明に納得せず席を立つほど、激しい議論が交わされたこともあった。

弱い経営基盤 重ねたスピードアップ策

 みえてきた事故の背景要因は…

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この記事を書いた人
千種辰弥
大阪社会部|災害担当
専門・関心分野
災害・気象、地球温暖化、マイノリティー