「報酬」示せど「節電」せず 経済学者が実験で驚いた想定外の世帯数

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平賀拓史

 節電で金銭的に得をする仕組みを作っても、動かない人は一定数いる。それでも仕組みは丁寧に設計すれば意味はある。ある行動経済学者の実証実験が、そんな現実と可能性を提示している。

 2020年8月24~30日の1週間。中部・近畿地方の3870世帯を対象にした、大規模な電力消費の実験が行われた。

 内容はこうだ。

 電力需要が多い時間帯に、研究チームが設定した電力消費量以下に節電できた世帯に、節電量に応じて1キロワット時あたり100円を最大3500円まで支払う……。

 京都先端科学大学の石原卓典准教授(35)=行動経済学=らの研究チームが、環境省の委託を受け実施した。東日本大震災で節電意識は浸透した一方、近年の電力逼迫(ひっぱく)は深刻な社会問題になっていることから、節電を促すのぞましいインセンティブ(報酬)の仕組みを探る目的だった。「今回の規模の実験は日本ではほとんど例はない」と石原准教授は語る。

事前申請した世帯は……

 対象世帯は、支払いを受ける…

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この記事を書いた人
平賀拓史
文化部|論壇担当
専門・関心分野
歴史学、クラシック、ドイツ文化など