医療用ヘリ不時着、運航会社謝罪「安全確保大きな課題」 昨夏も事故
長崎県の対馬空港を離陸した医療搬送用ヘリコプターが海上に不時着水し、3人が死亡した事故で、ヘリを運航していたエス・ジー・シー佐賀航空(佐賀市)の宮原幸徳・統括航空事業本部長らが7日、記者会見を開き、「3名の尊い命を失う結果となりましたことを深くおわび申し上げます」と謝罪した。
事故原因については、「今のところ判明していない」とした。救出された男性機長(66)らからの聞き取りもできていないという。国の運輸安全委員会の調査に全面的に協力するとも述べた。
佐賀航空によると、機体は6日午後1時半に対馬を出発。午後1時47分にシステム上で機体の位置がわからなくなった。ふだんから機体と無線がつながらないエリアのため、遭難したかどうか判断できなかったため、ヘリが向かっていた福岡和白病院(福岡市)にいる担当者から無線で呼びかけを続けた。本来、無線がつながる場所まで近づく時間になっても連絡が取れなかった。午後2時20分ごろに佐賀航空と国土交通省大阪航空局が連絡を取ったという。
異常の覚知と連絡のタイムラグについて、佐賀航空は、捜索と救難に関してとるべき措置を定めた「措置基準」にのっとっていると説明。宮原本部長は「3名の命が失われ、規定の範囲を超えて動くことができなかったかというのは課題としては残る」とした。
佐賀航空の運航をめぐっては昨年7月、小型ヘリが福岡県柳川市の農地に墜落し、搭乗者2人が死亡する事故が起きている。今回の事故機を含め、一時運航を中止し、緊急時の操作についての再教育などをして再開したものの、再び事故が起きた。宮原本部長は「どう安全を確保していくのか、大きな課題がある」と述べた。
唐津海上保安部によると、ヘリには6人が乗っており、死亡したのは女性患者(86)と搬送に付き添っていた息子(68)、男性医師(34)の3人。病院に搬送時は心肺停止状態だった。救出された男性機長(66)と男性整備士(67)、女性看護師(28)は意識はあるという。
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今回の事故機と同じ型式のヘリは警察庁も計5機所有している。同庁によると、警視庁と高知、福井、宮崎、徳島の各県警に配備されており、災害時の人命救助や上空からの情報収集などに使用されているという。事故の原因が不明なため、現時点ではヘリの使用停止など特段の対応は取らず、今後の状況に応じて判断するとしている。