韓国の尹錫悦大統領を罷免、憲法裁宣告 「非常戒厳」めぐり弾劾訴追
韓国の憲法裁判所は4日、昨年12月の「非常戒厳」宣布を受けて国会に弾劾(だんがい)訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(64)に対し、「憲法秩序を侵害した」などとして裁判官の全員一致で罷免(ひめん)を宣告した。尹氏は失職し、60日以内に大統領選が行われる。現職大統領が弾劾訴追で罷免されるのは、2017年の朴槿恵(パククネ)氏に続いて2人目。
憲法裁に上訴の制度はなく、今回の判断が最終決定になる。弾劾をめぐる与野党や世論の対立が深まるなか、尹氏の支持者らの強い反発が予想され、混乱が続く恐れがある。
尹氏は昨年12月3日に、1987年の民主化後初めてとなる非常戒厳を出し、同14日に国会で弾劾訴追案が可決されて職務停止となった。その後、罷免の可否を判断する弾劾審判が憲法裁で行われ、尹氏も現職大統領として初めて出廷した。
審判では、非常戒厳を出したことの違憲・違法性などについて、野党議員らで構成する訴追団側と尹氏側の主張が真っ向から対立した。
韓国の憲法は、戦時やそれに準ずる国家非常事態の際に、大統領が戒厳を宣布できるなどと定めている。訴追団側は、今回はこの要件を満たしておらず、憲政秩序を侵害する行為だと指摘。尹氏が国会に軍や警察を投入して封鎖しようとしたり、議員を「引きずり出せ」と指示したりしたなどと主張した。
一方、尹氏側は「巨大野党」が国政をまひさせていることを国民に知らせるのが目的で、「引きずり出せ」との指示についても否定。非常戒厳は大統領の権限の範囲内だったと主張した。
弾劾審判は2月25日に結審したが、宣告までに38日を要した。現職大統領として過去に弾劾訴追された盧武鉉(ノムヒョン)氏と朴氏の場合は結審から2週間以内に判断が示された。今回は弾劾に反対の世論も一定程度あり、非常戒厳という事案の重さなどから、憲法裁が慎重を期したとの見方が出ていた。
検事出身の尹氏は22年5月…
- 【視点】
昨年12月3日夜、韓国の尹錫悦前大統領による「非常戒厳」宣布によって引き起こされた韓国社会の危機と混乱は、ようやく本格的な収拾の軌道に乗り始めた。尹氏の支持者の一部が過激な抗議パフォーマンスを展開しているものの、政党を問わず大多数の市民は、
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